活動電位(読み)かつどうでんい(英語表記)action potential

精選版 日本国語大辞典 「活動電位」の意味・読み・例文・類語

かつどう‐でんい クヮツドウデンヰ【活動電位】

〘名〙 生物体の細胞組織が刺激を受けたときに生ずる電位。筋肉や神経に刺激を与えると、その興奮部位は静止部位に対して負の電位となり、その電位差によって活動電流が流れる。動作電位

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デジタル大辞泉 「活動電位」の意味・読み・例文・類語

かつどう‐でんい〔クワツドウデンヰ〕【活動電位】

生物体の細胞や組織が刺激を受けたときに発生する膜電位。刺激を受けて興奮した部分が、他の部分に対して負の電位をもつことで電位差が生じ、電流が流れる。動作電位。スパイク電位。→静止電位生物電気

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「活動電位」の意味・わかりやすい解説

活動電位
かつどうでんい
action potential

神経や筋肉などの興奮性細胞が興奮時に示す一時的な膜電位変化をいい、動作電位ともよぶ。その変化の結果流れる微弱な電流を活動電流という。また、活動電位が急激に変化する部分はスパイク電位とよばれる。活動電位のもっとも典型的なものは、神経繊維にみられる神経衝撃nerve impulseで、「全か無かの法則」に従い、伝導性をもつ。細胞の内部は、K+が多くNa+が少ない。静止状態では、膜は、K+透過性が比較的高く、細胞内の電位は、外部に対してマイナスに保たれている(静止電位)。刺激などにより膜電位が変化すると、膜の電位依存性Na+チャンネルが開き、Na+濃度勾配に応じて細胞内部がプラスの電位を示すようになる。遅れてK+チャンネルが開き、Na+チャンネルが閉じて、膜電位は速やかにマイナス電位に戻る。これが活動電位である。Na+チャンネルは2000ほどのアミノ酸が連なったα(アルファ)サブユニットといわれる部分と、その7分の1程度の小さなβ(ベータ)サブユニットが二つ集まった巨大分子である。αサブユニットは、膜を通過するセグメントといわれる部分を6個もったかたまり(ドメイン)が4個集まって、イオンが膜を通過する孔(ポア)を構成している。節足動物の筋肉などでは、カルシウムイオン(Ca2+)に対する透過性の増大により発生する活動電位が知られ、カルシウムスパイクとよばれる。また、活動電位は動物だけでなく、オジギソウモウセンゴケなど、ある種の植物にもみられる。

村上 彰]

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改訂新版 世界大百科事典 「活動電位」の意味・わかりやすい解説

活動電位 (かつどうでんい)
action potential

細胞膜に存在するナトリウム-カリウムATPアーゼに代表される種々のイオンポンプの働きによって細胞内外のイオン組成は大きく異なっている。これらのイオンの濃度差により通常60~90mV程度細胞内が負の電位(静止電位)を有している。これに対して神経や筋などの興奮性細胞は刺激に応じて一過性の電位変化を生じる。これを活動電位と呼ぶ。興奮時には膜内外の極性が逆転し,細胞内が30~40mV程度正の電位となる。この電位変化は数m/s程度の時間内に回復するのでスパイク電位spike potentialと呼ばれ,回復期にみられる遅い変化である後電位after potentialと区別される。この電位変化に伴って局所電流が誘起され,これにより興奮が減衰することなく伝導される。伝導速度は細胞によって異なり1~100m/sである。この電位変化はベルンシュタインJ.Bernsteinによって負電位が0となる脱分極によると説明された。そののちホジキンA.L.HodgkinとハクスリーA.F.Huxleyによりイカの巨大神経に直接電極を挿入し,膜内外の電位差が測定され電位の逆転が発見された。これを説明する説として興奮に伴ってイオンの透過性に変化が生じることで説明するイオン説が提唱された。興奮膜内にはイオンを通過させる特殊な通路(イオンチャンネル)が存在すると仮定してすべての現象が統一的に説明されつつある。なお活動電位はある種の植物細胞(オジギソウや食虫植物)にも見られる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「活動電位」の意味・わかりやすい解説

活動電位
かつどうでんい
action potential

神経細胞や筋細胞などの興奮性細胞の細胞膜は,外側が正,内側が負に分極しており,これを静止電位という。刺激によって静止電位が減少し,ある臨界点に達すると,脱分極は突如として自動的に進行し,その後ただちに再分極して静止電位に戻る。これが活動電位である。活動電位が生じた部分 (興奮部) では,極性が逆転して外側が負に分極するため,周囲の非興奮部との間に電位差を生じ,電流が興奮部に向って流れ込む。この局所電流は非興奮部を興奮させる刺激電流として作用するので,一部に生じた活動電位は次々にその周辺部を興奮させ,結局その細胞膜全体に波紋のように広がっていく。これを活動電位あるいは興奮の伝導という。

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栄養・生化学辞典 「活動電位」の解説

活動電位

 神経,筋細胞などの細胞に刺激が伝えられると,脱分極という現象が起こり,一定の電位を越えたときに急速に復元する.この膜電位変化をいう.

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世界大百科事典(旧版)内の活動電位の言及

【神経系】より

…静止電位の変化を起こさせるような要因は,その細胞に対する刺激として働く。ニューロンに刺激が働いて,ニューロンのある小部分の静止電位(局所電位local potential)が変化し,その大きさが一定値よりも小さくなると,活動電位action potentialないしスパイクspikeが発生する。このスパイク電位は全か無の法則(悉無律(しつむりつ)all or none law)にしたがう。…

【神経系】より

…静止電位の変化を起こさせるような要因は,その細胞に対する刺激として働く。ニューロンに刺激が働いて,ニューロンのある小部分の静止電位(局所電位local potential)が変化し,その大きさが一定値よりも小さくなると,活動電位action potentialないしスパイクspikeが発生する。このスパイク電位は全か無の法則(悉無律(しつむりつ)all or none law)にしたがう。…

【生体電気】より

…A.ボルタは収縮は接触電位差によると反論した。後に,このような筋肉や神経は興奮すると活動電位を発生することが知られるようになった。生体電気現象は興奮性細胞,すなわち感覚細胞や神経細胞,筋細胞で顕著である。…

※「活動電位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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