日本大百科全書(ニッポニカ) 「非磁性鋼」の意味・わかりやすい解説
非磁性鋼
ひじせいこう
nonmagnetic steel
磁化されない鋼をいう。鉄は磁気を帯びる性質がある。この性質が電気機械器具などにとっては不都合となることがある。しかし、鉄は高温になると原子配列が変わって(結晶変態)、オーステナイトとよばれる状態になると磁気を帯びなくなる。適量のニッケル、クロム、その他の元素を加えて合金にすると、室温でもオーステナイトとなり、非磁性になる。耐食合金として広く使用されているオーステナイト系ステンレス鋼も非磁性であるが、ニッケルやクロムを多量に含む合金のために高価である。炭素0.4%、マンガン18%、クロム3~5%、窒素0.1%を含む鉄合金は前記のステンレス鋼に比べて安価であり、非磁性鋼として大型の電気機械器具などに使用されている。
[須藤 一]