強磁性体(読み)キョウジセイタイ

デジタル大辞泉 「強磁性体」の意味・読み・例文・類語

きょうじせい‐たい〔キヤウジセイ‐〕【強磁性体】

強磁性をもつ物質。鉄・ニッケルコバルトおよびその合金など。

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精選版 日本国語大辞典 「強磁性体」の意味・読み・例文・類語

きょう‐じせいたいキャウ‥【強磁性体】

  1. 〘 名詞 〙 磁場によって強く磁化され、磁界を取り去っても残留磁化を残して磁気ヒステリシスを示す物体比透磁率が数百~数百万の磁性体で、鉄、ニッケル、コバルト、フェライトなど。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「強磁性体」の意味・わかりやすい解説

強磁性体
きょうじせいたい

物質を構成する原子やイオンのもつ磁気モーメントが、互いの間に働く相互作用により低温で平行に配列している物質をさす。この物質は外から磁場を加えると特異な磁化の仕方をする。すなわち、磁場が保磁力Hcを超えると、磁化は急速に増加して飽和に達し、次に磁場を取り除いても残留磁化Mrが残る。このような磁化曲線ヒステリシス曲線とよぶ。この現象はJ・A・ユーイングが1881年(明治14)東京大学に在籍中に発見したものである。強磁性体の内部は、磁区とよばれる領域に分割されている。この磁区の内部では、磁気モーメントはすべて同一方向に配列しているが、異なる磁区の磁化の方向が異なるため、強磁性体でも表面に磁化の出現しない状態(消磁状態)を実現することができる。磁区は磁壁によって囲まれており、外から加えた磁場による磁壁の移動によって強磁性体の磁化が行われる。強磁性体の磁区内の磁化(自発磁化)はキュリー温度で消失し、さらに高温では磁化率はキュリー‐ワイスの法則に従って温度変化する。強磁性体としてもっともよく知られているのは鉄、コバルト、ニッケルとその合金であるが、このほかにガドリニウムなどの希土類金属、ホイスラー合金Cu2MnAlなどのマンガン合金、La1-xSrxMnO3、CrO2、CrBr3、ZrZn2などの化合物があげられる。強磁性体の応用は、そのヒステリシスの形によって異なる。保磁力の小さい物質は軟材料とよばれ、透磁率が大きいのでトランス材料として用いられる。一方、保磁力の大きい硬材料は永久磁石材となる。またヒステリシスの形が角型のものは記憶素子として用いられる。最近では磁気抵抗メモリー、磁気センサーなどのスピントロニクス素子の材料としても用いられている。

[石川義和・石原純夫 2018年9月19日]

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百科事典マイペディア 「強磁性体」の意味・わかりやすい解説

強磁性体【きょうじせいたい】

磁場により強く磁化され,磁場を除いても磁化が残る物質。鉄,コバルト,ニッケルとそれらの合金,フェライトなどが例。磁化の強さは現在の磁場の強さだけで決まらず過去の状態に依存する(磁気ヒステリシス)。ある温度(キュリー温度)を越えると急激に常磁性体に変わる。内部は自発磁化(強磁性体が外部磁場をうけない状態で形成している磁化)をもつ磁区に分かれており,外部磁場による磁区の方向・体積の変化により強磁性体特有の性質を示す。永久磁石材料にされるほか,透磁率が高いこと,磁歪を示すことなども利用される。
→関連項目強誘電体残留磁化磁化磁石磁性体相転移電磁石

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「強磁性体」の意味・わかりやすい解説

強磁性体
きょうじせいたい
ferromagnetic substance

磁性体のうちで,結晶内の隣合った磁性原子の磁気モーメントが平行に並んで外部に強い磁性を示すもの。強磁性を示す元素は鉄,コバルト,ニッケルなどがあり,これらの合金は良好な強磁性体として知られている。通常,磁気モーメントが平行にそろっている小領域を磁区といい,単結晶でも多数の磁区が存在する。磁界印加とともにその向きがそろい,全体として1つの向きとなって強い磁気的性質を示す。強磁性体はその成分や製作法の違いによって磁気的性質が変えられ,それぞれに応じて永久磁石,高透磁率材料,磁歪材料などに用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内の強磁性体の言及

【記憶装置】より

…1998年現在よく使われているのはIC1個あたりの容量が16ないし64メガビットのDRAMであり,アクセス時間は60ns(ナノ秒),つまり6×10-8秒程度である。
[磁気記憶装置]
 強磁性体の磁化特性を利用した記憶媒体を使った記憶装置を磁気記憶装置という。磁気記憶装置で使われる記憶媒体として,1950年代には磁気ドラムが使われたこともあるが,その後長期にわたって磁気ディスクや磁気テープが主流だった。…

【固体】より

…半導体では温度が下がると電流の運び手である自由電子が不純物に戻り,その結果,自由電子数が減少するために抵抗が増大して,金属と逆のふるまいを示す。金属半導体
[磁性による固体の分類]
 固体は磁場の中におかれたときに示す性質によって,強磁性体,フェリ磁性体,反強磁性体,常磁性体,反磁性体に分類される。これらの磁気的性質(磁性という)の原因は物質中の電子によるもので,電子の軌道運動とスピンに起因するものに大別される。…

【磁気】より

…磁石は鉄,コバルト,ニッケルなどのいわゆる強磁性体を引きつけるが,このような現象の根源となるものを磁気という。また広くはこれらの現象そのものをいう場合も多く,磁石に近づいた強磁性体も一時的に磁石になるから,これは磁石と磁石とが力を及ぼし合う現象であるということもできる。…

【磁性】より

…磁石に近づけたとき,物質が示す性質はその例である。このとき著しい性質を示すのは強磁性と呼ばれる磁性を有する物質(強磁性体)で,自身も磁極をもち,磁石となって互いに力を及ぼす。強磁性のような著しい効果は示さないが,磁石が及ぼす力(磁場)の方向に対して逆の方向に弱い磁化を生ずる性質を反磁性,磁場の方向に平行な磁化を生ずる性質を常磁性といい,そのような磁性をもつ物質をそれぞれ反磁性体,常磁性体と呼ぶ。…

【磁性材料】より

…このような材料は磁性材料にはならないが,一方では磁性材料の応用が広がるにつれて磁性があっては困る用途もふえており,とくにその点に注目した材料に非磁性材料がある。磁場の作用によって強く磁化するものが強磁性体であって,鉄が最も基本的な材料である(磁性については〈磁性〉の項参照)。 磁性材料として利用されるのは強磁性体であるが,その磁気的性質は材料によって大幅に違い,それぞれの特徴によって応用が違ってくる。…

※「強磁性体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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