物質を構成する原子やイオンのもつ磁気モーメントが、互いの間に働く相互作用により低温で平行に配列している物質をさす。この物質は外から磁場を加えると特異な磁化の仕方をする。すなわち、磁場が保磁力Hcを超えると、磁化は急速に増加して飽和に達し、次に磁場を取り除いても残留磁化Mrが残る。このような磁化曲線をヒステリシス曲線とよぶ。この現象はJ・A・ユーイングが1881年(明治14)東京大学に在籍中に発見したものである。強磁性体の内部は、磁区とよばれる領域に分割されている。この磁区の内部では、磁気モーメントはすべて同一方向に配列しているが、異なる磁区の磁化の方向が異なるため、強磁性体でも表面に磁化の出現しない状態(消磁状態)を実現することができる。磁区は磁壁によって囲まれており、外から加えた磁場による磁壁の移動によって強磁性体の磁化が行われる。強磁性体の磁区内の磁化(自発磁化)はキュリー温度で消失し、さらに高温では磁化率はキュリー‐ワイスの法則に従って温度変化する。強磁性体としてもっともよく知られているのは鉄、コバルト、ニッケルとその合金であるが、このほかにガドリニウムなどの希土類金属、ホイスラー合金Cu2MnAlなどのマンガン合金、La1-xSrxMnO3、CrO2、CrBr3、ZrZn2などの化合物があげられる。強磁性体の応用は、そのヒステリシスの形によって異なる。保磁力の小さい物質は軟材料とよばれ、透磁率が大きいのでトランス材料として用いられる。一方、保磁力の大きい硬材料は永久磁石材となる。またヒステリシスの形が角型のものは記憶素子として用いられる。最近では磁気抵抗メモリー、磁気センサーなどのスピントロニクス素子の材料としても用いられている。
[石川義和・石原純夫 2018年9月19日]
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…1998年現在よく使われているのはIC1個あたりの容量が16ないし64メガビットのDRAMであり,アクセス時間は60ns(ナノ秒),つまり6×10-8秒程度である。
[磁気記憶装置]
強磁性体の磁化特性を利用した記憶媒体を使った記憶装置を磁気記憶装置という。磁気記憶装置で使われる記憶媒体として,1950年代には磁気ドラムが使われたこともあるが,その後長期にわたって磁気ディスクや磁気テープが主流だった。…
…半導体では温度が下がると電流の運び手である自由電子が不純物に戻り,その結果,自由電子数が減少するために抵抗が増大して,金属と逆のふるまいを示す。金属半導体
[磁性による固体の分類]
固体は磁場の中におかれたときに示す性質によって,強磁性体,フェリ磁性体,反強磁性体,常磁性体,反磁性体に分類される。これらの磁気的性質(磁性という)の原因は物質中の電子によるもので,電子の軌道運動とスピンに起因するものに大別される。…
…磁石は鉄,コバルト,ニッケルなどのいわゆる強磁性体を引きつけるが,このような現象の根源となるものを磁気という。また広くはこれらの現象そのものをいう場合も多く,磁石に近づいた強磁性体も一時的に磁石になるから,これは磁石と磁石とが力を及ぼし合う現象であるということもできる。…
…磁石に近づけたとき,物質が示す性質はその例である。このとき著しい性質を示すのは強磁性と呼ばれる磁性を有する物質(強磁性体)で,自身も磁極をもち,磁石となって互いに力を及ぼす。強磁性のような著しい効果は示さないが,磁石が及ぼす力(磁場)の方向に対して逆の方向に弱い磁化を生ずる性質を反磁性,磁場の方向に平行な磁化を生ずる性質を常磁性といい,そのような磁性をもつ物質をそれぞれ反磁性体,常磁性体と呼ぶ。…
…このような材料は磁性材料にはならないが,一方では磁性材料の応用が広がるにつれて磁性があっては困る用途もふえており,とくにその点に注目した材料に非磁性材料がある。磁場の作用によって強く磁化するものが強磁性体であって,鉄が最も基本的な材料である(磁性については〈磁性〉の項参照)。 磁性材料として利用されるのは強磁性体であるが,その磁気的性質は材料によって大幅に違い,それぞれの特徴によって応用が違ってくる。…
※「強磁性体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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