日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
革新的研究開発推進プログラム
かくしんてきけんきゅうかいはつすいしんぷろぐらむ
可能性は低いものの、実現すれば社会や産業のあり方を大きく変える革新的技術の開発を目ざす計画。英語名のImpulsing Paradigm Change through Disruptive Technologies Programを略してImPACTとよばれることもある。アメリカの国防総省高等研究計画局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)が採用している研究手法をモデルに、日本政府が2014年度(平成26)に導入した。同プログラムは、(1)既存技術を進化させる研究ではなく、実現性は薄いがとっぴで型破りなテーマに挑戦する、(2)開発責任者であるプログラム・マネージャー(PM)1人に、テーマの立案、研究者の発掘、計画の進捗・管理・点検、平均約10~15億円にのぼる予算配分などの権限をすべて与える、(3)まず目標とする技術や成果を決めて、そこから逆に研究の道筋を定める、などの特徴をもつ。2015年末時点で、東芝の藤田玲子(核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化)、東京大学の合田圭介(ごうだけいすけ)(セレンディピティの計画的創出による新価値創造)、筑波大学の山海嘉之(さんかいよしゆき)(重介護ゼロ社会を実現する革新的サイバニックシステム)、京都大学の原田博司(社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム)など16人のプログラム・マネージャーを選定している。また科学技術振興機構法を改正し、開発を支援するための基金を設け、5年間で550億円を投じる計画である。
ImPACTがモデルとしたアメリカの国防総省高等研究計画局はこれまでに、世界中の核実験探知のための地震計ネットワークからインターネットの原型を開発したほか、パソコンのマウス、ロボット掃除機「ルンバ」を生んだ多目的ロボット技術、自分の位置がわかる全地球測位システム(GPS)、音声認識を利用した携帯端末の操作補助機能「Siri(シリ)」、自動車の自動運転技術などを開発した実績がある。
[編集部]