韓煕載夜宴図(読み)かんきさいやえんず(その他表記)Hán Xī zài yè yàn tú

改訂新版 世界大百科事典 「韓煕載夜宴図」の意味・わかりやすい解説

韓煕載夜宴図 (かんきさいやえんず)
Hán Xī zài yè yàn tú

中国,五代十国時代の南唐の大官韓煕載(902-970)の夜宴を主題とする作品。韓煕載は字を叔言,濰州(いしゆう)北海(山東省濰県)の人。後唐で進士となったが,父が明宗に誅殺されたため,南唐にのがれて三主に仕え,後主李煜(りいく)のとき中書侍郎にいたって卒した。李煜は,門弟,妾妓に囲まれ歌舞に身をやつしてはばからない韓熙載を責めいったん左遷したものの,その底にある意図を知って再び起用せざるをえない状況に追いこまれていた。当時南唐は北方の新興軍事大国北宋の脅威を受け,もはやいかに犠牲を少なくして併呑されるかの段階に立ちいたっていた。韓煕載の夜宴は亡国の危機に際して辣腕をふるう愚を避ける巧みな自己保身の術であるとともに,南唐の自壊を率先して印象づけ北宋との正面衝突を避けようという政治家の必死の姿でもあったのである。祖無択の跋によれば,絵はもともと李煜の命で宴席に送りこまれた南唐の宮廷画家顧閎中(ここうちゆう)によって描かれたものという(《竜学文集》巻16)。現存する作品が顧閎中の原本であるかに関しては確証がなく,画跋ともに南宋時代の模本であると考えられている。痛憤をこめた夜宴を介した老獪な政治家と亡国の詞人とのからみあいは,後世の人に興味深かったらしく,同一主題による作品が相当描かれたことが文献などからうかがえる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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