日本大百科全書(ニッポニカ) 「食品残留農薬基準」の意味・わかりやすい解説
食品残留農薬基準
しょくひんざんりゅうのうやくきじゅん
食品中に残留する農薬は、人体に対して健康上大きな問題をもつ。しかし、農薬を使用しないで農作物をつくることは、今日の農業では、一部無農薬農業の例外を除き、主流ではない。そのため、長期に摂取されたとしても、健康に影響を及ぼさない残留農薬基準を定め、できうる限り農薬の残留率を低くすることが望ましい。農薬の残留基準が設定されたのは1968年(昭和43)が最初で、とくに毒性あるいは残留性が高いものについて食品衛生法によって4種の農産物(キュウリ、トマト、ブドウ、リンゴ)について5品目の農薬(ヒ素、鉛、γ(ガンマ)-BHC、DDT、パラチオン)の残留基準が定められた。その後しだいに各種の農薬の残留基準が定められた。2006年(平成18)には基準値を満たしている食品のみ流通できるというポジティブリスト制が導入された。従来の基準に加え、日本で残留基準がなく他国に基準のあるものには暫定基準が、国内外に基準のないものには一律基準が導入された。
[河野友美・山口米子]
『農薬環境保全対策研究会編『残留農薬基準ハンドブック――作物・水質残留の分析法 農薬登録保留基準』(1995・化学工業日報社)』