BHC(読み)びーえいちしー

日本大百科全書(ニッポニカ) 「BHC」の意味・わかりやすい解説

BHC
びーえいちしー

ベンゼンヘキサクロリドbenzenhexachlorideの略称であるが、この化合物はベンゼンに塩素を付加したものであるから、正式化学名は1,2,3,4,5,6-hexachlorocyclohexaneである。日本で命名した誤名のBHCが国際的になった。1825年ファラデーが初めて合成し、1912年リンデンTeunis van der Linden(1884―1965)が4個の配座異性体を発見、1941年になって殺虫力のあることが発見された。1942年スレードRoland Edgar Slade(?―1968)が詳細な研究を行い、異性体中でγ(ガンマ)と命名するものが抜群に殺虫力をもつことを発表した。各種の害虫に対して接触毒、食毒、燻蒸(くんじょう)毒作用をもち、日本では1949年(昭和24)から水田果樹や野菜の害虫防除とともに、ハエ、カ、ノミなど衛生害虫防除にも広く大量の製剤が使用され、奏効を呈した。自然界で分解しにくいために食物連鎖で生物濃縮され、最終的に人体へ蓄積するおそれを考慮し、1971年より日本では使用が禁止された。

[村田道雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「BHC」の意味・わかりやすい解説

BHC
ビーエイチシー
benzene hexachloride

C6H6Cl6 。1分子のベンゼンに6原子の塩素が付加したもので,殺虫剤として広く用いられた。有機塩素系剤。 BHCには7種 ( α~θ ) が知られている。このうち γ-BHC の殺虫性が顕著であり,農薬リンデンは γ- 体を 99%以上も含むものである。白色粉末で特異臭をもつ。工業的にはベンゼンに紫外線を照射しながら塩素を吸収させて製造する。安価で強力な殺虫性があるため日本では農薬として広く用いられていた。しかし大量に用いたため残留問題となり,その製造と使用が中止された。

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