飲食物、あるいは飲食によっておこる衛生上の危害を防止する目的でつくられた法律(昭和22年法律第233号)。憲法第25条の「公衆衛生の向上及び増進」に基づいてつくられている。第二次世界大戦終了以前は、食品衛生に関するものは内務省(警察)の管轄であった。それが1947年(昭和22)厚生省(現厚生労働省)の管轄になり、数度の改定を経て現在に至っている。おもな改正としては、森永ヒ素ミルク事件(1955)をきっかけに食品添加物にかかわる条項を強化した1957年、食品公害や環境汚染の悪化に対処した1972年、WTO(世界貿易機関)発足に対応した1995年(平成7)の改正などがある。2003年には、食品安全基本法の制定に伴い、食品衛生法も大幅改正が行われた。それまでの衛生上の危害の発生防止にとどまらず、国民の健康保護の観点が盛り込まれた。また、食の安全に対する国や都道府県の責務、食品企業の責任が定められた。さらに、リスク分析手法が導入され、リスク評価とリスク管理の役割が分けられたことも重要な特徴である。
この法律では、「食品とは、すべての飲食物をいう。ただし、薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品は、これを含まない」(4条)と規定している。また、腐敗、変敗しているもの、有毒物質が含まれているもの、病原微生物に汚染されているもの、不潔、異物の混入しているものの販売や加工の禁止(6条)や、省令に定める疾病にかかった動物の肉等の販売の制限(9条)がある。食品添加物として指定された以外の物質やそれを含む食品の販売を制限(10条)し、規格基準に適合しない添加物および食品の販売を禁止(11条)している。第6、9、10、11条の違反に対しては、懲役または罰金あるいは、その両者を科することが定められている(71条~73条)。なお、薬事法で許されている薬品でも、食品に使用することは食品衛生法では許されていない。したがって、薬局方によるビタミンを栄養強化用に使用したときには、食品衛生法違反となる。栄養強化の場合には、食品添加物としての基準に合格し、その指定を受けたものでないと使用できない。
このほか、この法律では、加工食品の内容表示、飲食店や食品加工業、指定食品の販売などの営業許可および停止、食品等の検査、食品に使用する器具・包装の規制、中毒に関する届出・調査・報告、幼児の使用するおもちゃの規制、保健所での監視業務、ならびに検査のための食品衛生監視員による食品の強制収去などについても規定されている。なお、食品衛生法は、日本に居住するすべての人が従うべき義務を負う強制法である。さらに、食品衛生法施行令(政令)、食品衛生法施行規則(厚生労働省令)が付随している。
[河野友美・山口米子]
『藤原邦達著『よくわかる天然添加物』『食品衛生法』(ともに1996・合同出版)』▽『食品衛生研究会編『Q&A改正食品衛生法等の要点』(2003・新日本法規出版)』▽『食品衛生研究会監修『早わかり食品衛生法 食品衛生法逐条解説』新訂版(2004・日本食品衛生協会)』
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… 食中毒は日常生活の基本である衣食住に密接にかかわっており,食品衛生上の重要課題である。日本では食品衛生法(1947年公布)により食中毒患者の届出が義務づけられており,1952年以降は統計として体系化されている(現在の食中毒統計)。食中毒の発生状況をみると,近年事件数は減少しているにもかかわらず,大型の食中毒が発生するため患者数に減少が見られず,毎年2万~4万名の届出がある。…
…人間の生命・健康の維持・増進のため食料品の無毒性など,安全性を確保することをいう。行政的には食品衛生法にもとづき,食品の製造,販売等に対する規格・基準の設定や監視業務を行うことをいい,厚生省公衆衛生局,都道府県衛生局等,保健所,市町村等に食品衛生課(または係)が設置され,全国に網羅されたネットワークがある。また,衛生試験所が国・地方自治体に設置され,食品衛生の検査業務の中心になっている。…
…これには,(1)食品としての農産物に対し,消費者の生命・健康の保持という見地から行われる検査,(2)商品としての農産物に対し,その標準化をすすめて取引の円滑・公正化をはかろうとする見地から行う検査,がある。(1)は生産加工過程,品質等に関して法律が定めた基準を満たしているかどうかをみる検査であり,〈食品衛生法〉(1947公布)に基づいて一般に保健所が卸売市場や小売店等の加工食品,生鮮食品に対して行っている。とくに農業生産と関係の深いこの種の検査は,〈と畜場法〉(1953公布)による獣畜およびその肉等の検査である。…
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