改訂新版 世界大百科事典 「養廉銀」の意味・わかりやすい解説
養廉銀 (ようれんぎん)
Yǎng lián yín
中国,清代における文官給与の一種で,職務手当ともいうべきもの。養廉とは具体的には官僚が汚職をせずに生活することで,本来は正規の俸給にその意味がこめられていたはずであるが,明代以来本俸以外の手当にこの名を用いる例が出てきた。辺臣養廉田などというのがそれである。明代以来の官僚の給与はきわめて低く,そのため官界の腐敗にははなはだしいものがあった。地方官は徴税の際,付加税を恣意的に徴収して生活費にあて,上官は下僚からの付け届けに頼っていた。このような状況に対し,雍正帝(在位1723-35)は綱紀粛正と財政改革とをかねて,付加税の徴収を一定限度まで公認し,それを財源として養廉銀を支給することにした。その額は地位により地方により異なったが,本俸の数倍からときに数百倍に上る例もある。山西,河南から始まって順次全国に実施された。当初は臨時措置のはずであったが,乾隆年間(1736-95)には制度化された。
ただし養廉の効果はあまり続かず,官界の腐敗は再び進行した。なお武官にも同様な手当が設けられたが,この方は空糧とか親丁名糧とかよばれた。
→俸禄
執筆者:岩見 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報