馬術用語(読み)ばじゅつようご

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

駈歩(かけあし)/キャンター canter
 馬の歩法(ほほう)の一つ。3節のリズムで走り、1完歩(かんぽ)内に1回、四肢が地を離れ、空中に浮く瞬間がある。右回りに適する駈歩(右駈歩)と左回りに適する駈歩(左駈歩)があり、「右手前」とよばれる前者は右前肢が、「左手前」とよばれる後者は左前肢が離地した後に、馬は空中に浮く。左駈歩で右回転、右駈歩で左回転を命ずるとき、その運動を「反対駈歩」とよぶ。馬術競技では、1完歩の歩幅によって収縮駈歩、中間駈歩、伸長駈歩を区別する。調教途上の段階では、尋常駈歩がある。
完歩(かんぽ)
 四足動物が行う駈歩(かけあし)または襲歩(しゅうほ)において、4本の肢(あし)の1サイクルの動きのこと。ストライドstrideともいう。
騎座(きざ)
 腰から下、膝(ひざ)に至るまでの鞍(くら)に接する部分をいう。馬術は騎座と拳(こぶし)を見れば騎手の技量がわかるといわれる。騎座と脚(きゃく)は馬の推進をコントロールするアクセル、手綱(たづな)を持つ拳はハンドルの役割をもっている。騎座、脚、拳を連係して使って馬に指示を与えるが、その際には微妙な感覚が要求される。
騎乗者資格(きじょうしゃしかく)
 日本馬術連盟では、騎乗者のレベルに応じてA~C級の騎乗者資格を認定している。A級は国際馬術連盟(FEI)公認競技会へのエントリーに必要な資格、B級は日本馬術連盟主催競技会、公認競技会の出場資格で、C級はB級騎乗者資格の受験資格。種目限定の資格もある。B・C級の試験は、筆記試験と実技試験の二本立てで行われるが、A級は競技実績による書類審査のみである。
口向(くちむ)
 銜(はみ)(馬に指示を与えるため、馬の口の中に入れる道具)を通じて、馬の口から騎手の拳に伝わる感覚のこと。馬が銜を受け入れて素直に指示に従うときには「口向きが良い」、銜や指示に抵抗するときには「口向きが悪い」などという。
屈撓(くっとう)
 たわむこと。馬術では、馬体の柔軟性がたいせつで、前後左右への屈撓が求められる。とくに頭頸(とうけい)部の関節、胸椎(きょうつい)や腰椎、後肢の関節に適度な屈撓が求められ、これらは互いに関連性をもつ。
(くら)
 馬の背に乗せて、その上に人間が騎乗する馬具。種目、用途に応じてより乗りやすいようにいろいろなタイプがある
国際馬術連盟(こくさいばじゅつれんめい)
 FEI(Fdration Equestre Internationale)。1921年、世界の馬術界を統轄する機関として創設され、日本は創始国(8か国)の一つである。本部はスイスに置かれ、2018年の時点で、133の国と地域が加盟している。
コレクション(収縮) Collection
 馬術競技(とくに馬場(ばば)馬術競技)において馬に求められる体勢の一つ。後肢を踏み込み、前躯(ぜんく)を起こし、四肢が馬の重心近くに集まっている体勢で、かつ馬は前進気勢をもち活発に動かなければならない。
CEI(シーイーアイ) Concours de Raid d'Endurance International
 国際馬術連盟の承認を受けた国際エンデュランス馬術競技会のこと。
CSI(シーエスアイ) Concours de Saut d'Obstacles International
 国際馬術連盟の承認を受けた国際障害馬術競技会のこと。
CCI(シーシーアイ) Concours Complet d'Equitation International
 国際馬術連盟の承認を受けた国際総合馬術競技会のこと。
CDI(シーディーアイ) Concours de Dressage International
 国際馬術連盟の承認を受けた国際馬場馬術競技会のこと。
常歩(なみあし)/ウォーク walk
 馬の歩法の一つで、人の「歩き」に相当する。四肢は左後肢→左前肢→右後肢→右前肢の順に動き、いずれの瞬間にも最低1肢は地面についている。馬術競技では、歩幅によって収縮常歩、中間常歩、伸長常歩に区分する。手綱を緩め、銜をかけず、頭頸部の動きを自由にして馬なりに歩かせることを自由常歩という。
日本馬術連盟(にほんばじゅつれんめい)
 日本における馬術競技を統括する公益社団法人。1946年(昭和21)創立。英語名称はJapan Equestrian Federation(JEF)。国内における競技者、競技馬、審判員等の資格付与と登録および馬術競技会規程等の制定をつかさどる。連盟が扱う正式種目は障害馬術、馬場馬術、総合馬術およびエンデュランスの4種目。
パッサージュ passage
 馬場馬術のなかでもとくに高度な運動。馬体はきわめて収縮し、四肢を高く上げて行う非常に躍動感のある速歩(はやあし)である。馬体が空間にとどまる時間の長いものがよい。
ハーフパス half pass
 斜線上を斜め前方に向かって歩く運動であり、馬の左右の肢はX状に交差する。かつては横歩(よこあし)といった。
(はみ)
 馬の口の中に入れる道具で、これにつながっている手綱を拳で操作することにより、馬に指示を与える。調教進度、運動の目的などに応じて、棒状、H型などさまざまな形状、太さのものがある。
速歩(はやあし)/トロット trot
 馬の歩法の一つ。人の「走り」に相当する。馬では、対角2肢(右前肢と左後肢、左前肢と右後肢)が同時に動き、1完歩の間に2回、四肢が地を離れ、馬が空中に浮かぶ瞬間がある。馬術では、歩幅によって収縮速歩、中間速歩、伸長速歩に区分する。調教途上の段階においては尋常速歩がある。また、速歩の高度な演技として、より高く大きく肢を上げて行うパッサージュ、ほぼ同じ場所で行うピアッフェがある。
ピアッフェ (英)piaffe、(仏)piafferまたはpiaff
 馬場馬術のなかでもとくに高度な運動。馬体はきわめて収縮し、四肢を高く上げて、足踏みをしているかのような印象を与える、躍動感のある速歩である。バランスとリズムの整っていることがたいせつ。
ピルーエット pirouette
 左右いずれかの後肢を中心に、馬が180度または360度旋回するもの。通常は収縮常歩か収縮駈歩で行われる。
扶助(ふじょ)
 騎手の意思を馬に伝えるための動作や合図。馬体にじかに接する主扶助と、主扶助を補う副扶助とがある。主扶助には、拳、脚、騎座があり、副扶助には、鞭(むち)、拍車(長靴(ちょうか)のかかとにつける金具)、舌鼓(ぜっこ)(舌打ちのこと)、音声などがある。
フライングチェンジ flying change
 駈歩において、1完歩のなかで手前をかえるもの。右手前駈歩から左手前駈歩、左手前駈歩から右手前駈歩への変換を、四肢が空中に浮いているときに、前肢・後肢同時に行う高度な運動。4歩ごと、3歩ごと、2歩ごと、あるいは歩ごとのように連続して行うこともできる。踏歩変換(とうほへんかん)ともいう。
歩法(ほほう)
 馬の歩き方。四肢の離地と着地のパターンによって分類される。馬術競技では、スピードの遅い順に常歩、速歩、駈歩の3種が基本。ただし、総合馬術競技のクロスカントリーでは、競馬で見せる襲歩(しゅうほ)(gallop)という最速の歩法を繰り出すこともある。

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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