日本歴史地名大系 「駿河記」の解説
駿河記
するがき
三七巻 桑原藤泰編
成立 文政元年
写本 国立国会図書館(二七冊)・静岡県立中央図書館(二二冊)ほか
解説 島田宿の素封家桑原藤泰(号は黙斎)の編による駿河国の地誌。文化九年駿府町奉行服部貞勝は駿河国地誌の編纂を企図し、与力佐藤吉十郎をその掛に充て、山梨稲川を総裁、駿府宝泰寺住職峻嶽を補佐とし、在野の学者等に郡ごとの担当を決めて調査執筆を委嘱、藤泰は志太郡の撰者を命じられた。地誌編纂は服部が松前奉行に転出し、また編纂を委嘱されていた六人のうち四人が途中で死亡したために実現しなかった。藤泰はこの計画より前の文化六年から地誌の編纂を企てて志太・益頭・有渡三郡を巡村、文化九年には大井川を遡行して志太郡境を踏査していたが、さらに撰者を命じられてからは志太・益頭・有渡三郡を歴巡。文化一〇年・同一二年に安倍郡を巡村し、文政元年には庵原・富士・駿東の三郡を回って前担当者の遺漏を補って草稿を完成させた。構成は首巻を国号総論として国郡名・田租・駅伝路・式内社・国府・国司・城主の記述にあてる。巻一以下が各村の地誌で、一村ごとに村名・行程・村高(寛永改高・新田高)・神社・寺院・旧家・城跡・山川・旧跡・産物などについて記述。古典籍・古文書を引用し、現地での調査・聞取りを行って綿密な考証を加えている。凡例では調査に際し古文書の閲覧や聞取りができなかった苦労が披瀝されている。
活字本 「駿河記」(昭和八年、昭和四九年復刊)
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報