鬼の居ぬ間に洗濯(読み)オニノイヌマニセンタク

デジタル大辞泉 「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味・読み・例文・類語

おに洗濯せんたく

怖い人や気兼ねする人のいない間に、思う存分くつろぐこと。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 「鬼の居ぬ間に洗濯」の解説

鬼の居ぬ間に洗濯

主人や口うるさい監督者など、気がねする人がいなくなると、使用人下位の者がくつろいで、自由にふるまうことのたとえ。

[使用例] 主君源三郎は、今朝馬を駆って出ていったきり、夜になっても帰らない〈略〉一同なんの心配もなく、かえって、鬼のいぬ間の洗濯と、宵から大酒盛をやったあげく、みんなその場へへたばってしまって、イヤモウ、たたいてもっても眼をさますこっちゃアありません[林不忘丹下左膳|1934]

[使用例] 夏の暑い日に、〈略〉塾頭が「〈略〉留守番を頼む」と出かけていった。若い修行者でありますから、鬼の留守でこんないいことはない。といって、遊ぶ道具は何にもありません。〈略〉鬼のいぬ間の洗濯でもって、みんな昼寝をやろうというわけで[松原泰道*洗心|2003]

[解説] 「居ぬ間」は、「来ぬ間」や「留守」ともいいます。ことわざが描写する情景や心理は、他の言語の文化にも共通しますが、日本語のことわざは主人や監督者を「鬼」にたとえ、「洗濯」を「命の洗濯」ともいい、下位の者に同情的な表現といえるでしょう。
 ちなみに、和服の洗濯(古くは「せんだく」と発音した)は、縫った糸をほどいて洗い張りし、再び縫い直します。手間がかかり、一日では終わらないのがふつうで、近代になっても「せんだく」が数日にわたる里帰りを意味する地方も少なくありませんでした。衣服をよみがえらせる「洗濯」は、洗濯する者の心身の疲れを癒し、元気を回復することにもつながっていたのです。

英語〕When the cat's away the mice will play.(猫がいないとネズミが跳ね回る)

中国〕閻王不在、小鬼翻天(閻魔王の留守に手下の鬼があばれる)

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