魯肅(読み)ろしゅく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「魯肅」の意味・わかりやすい解説

魯肅
ろしゅく
(172―217)

中国、後漢(ごかん)末、孫権(そんけん)の幕僚。字(あざな)は子敬(しけい)。臨淮(りんわい)郡東城(とうじょう)県(安徽(あんき)省定遠(ていえん)県)の人。富裕な豪族の出身で、その財力名士との交友に用いた。揚州(ようしゅう)随一の名士である周瑜(しゅうゆ)に、資金援助を要請され、二つあった食糧貯蔵庫のうちの一つをすべて与えることで、評価されて名士となった。周瑜の推挙で孫権(そんけん)と会見し、漢室復興の非現実性を説いた。そのうえで、長江(ちょうこう)流域を領有して皇帝となり、天下を三分すべきことを孫権に勧める。あまりに先進的な提案に、孫権は当初従うことができなかった。魯肅は、天下を三分するための第三の勢力として劉備(りゅうび)を育成することを目ざし、208年の赤壁(せきへき)の戦いに際して同盟を結ばせる。勝利の後には、曹操に対抗させるため、劉備の荊州(けいしゅう)における勢力拡大を支援した。魯肅の死後、諸葛亮(しょかつりょう)(孔明(こうめい))は、喪に服してその恩を謝した。『三国志演義』では、蜀(しょく)を引き立てるため、ただのお人好しに描かれているが、史実では三国鼎立(ていりつ)を実現させた才能溢(あふ)れる軍略家である。

[渡邉義浩]

『渡邉義浩著『「三国志」軍師34選』(PHP文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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