日本大百科全書(ニッポニカ) 「鴨の貝焼き」の意味・わかりやすい解説
鴨の貝焼き
かものかやき
島根県の郷土料理。冬になると宍道(しんじ)湖に野生のカモが飛んでくる。このカモを鍋(なべ)料理にしたものであるが、鍋に大きなアワビの貝殻を用いるのが特色で、「かやき」の名は貝(かい)焼きから転じたもの。作り方は、1人用の小さいこんろにアワビの貝殻をのせ、その中にだし汁を入れる。短冊に切ったダイコン、ささがきごぼう、ネギ、セリなどを加える。ほかに、さっとゆでた百合(ゆり)根とアカガイのむき身を入れる。このように野菜などを入れたあとでカモの肉を加え、すぐに裏返しにして煮すぎないようにし、カモの香りを楽しむというのが貝焼きの特徴である。鍋がわりのアワビ貝を2、3回しか使わないのは、アワビの残り香も味わうためである。
[多田鉄之助]