会津八一(あいづやいち)の第二歌集。1940年(昭和15)5月に創元社より出版、題簽(だいせん)自筆、装丁青山次郎。著者の第一歌集『南京新唱(なんきょうしんしょう)』の全作品を含み、以後の作品を収録した。1924年(大正13)『南京新唱』を発表したが、少数の知己を得ただけで、世の知るところとならなかった。以来、16年の歳月を経てこの集を刊行するに至り、ようやくその希有(けう)の詩才を認められるようになった。「いかるがのさとのをとめはよもすがらきぬはたおれりあきちかみかも」など、南都の風物を詠じた作品が多く、『鹿鳴集』は奈良の古寺を愛する人々の座右の書となった。
[宮川寅雄]
『『自註鹿鳴集』(1965・中央公論美術出版)』▽『原田清著『会津八一 鹿鳴集評釈』(1998・東京堂出版)』▽『吉野秀雄著『鹿鳴集歌解』(中公文庫)』
…容貌魁偉,人柄も狷介(けんかい)孤高,かずかずの逸話を残したが,最後の東洋的文人だったことに間違いない。総ひらがなの万葉調短歌は初めから完成体を示し,《南京新唱(なんきようしんしよう)》(1924)およびそれを発展させた《鹿鳴集(ろくめいしゆう)》(1940)は昭和歌壇の圏外にありながら昭和短歌を代表する秀歌群として聳立(しようりつ)する。〈おほてらのまろきはしらのつきかげをつちにふみつつものをこそおもへ〉(《鹿鳴集》唐招提寺にて)。…
※「鹿鳴集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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