改訂新版 世界大百科事典 「一次独立」の意味・わかりやすい解説
一次独立 (いちじどくりつ)
linearly independent
空間のベクトルa1,a2,a3が同一平面上にないとき,α1a1+α2a2+α3a3=0(αi:実数)ならば,α1=α2=α3=0となる。一般にある空間のn個のベクトルa1,……,anについて,α1a1+α2a2+……+αnan=0(αi:実数)ならば必ずα1=α2=……=αn=0となるとき,a1,……,anは一次独立であるという。n=1ならa1≠0ということであり,n=2ならa1とa2が同一直線上にないということである。この概念を一般化して,線形空間Vの元x1,……,xnについて,一次独立をα1x1+……+αnxn=0(αi:スカラー,α1=……=αn=0)で定義する。x1,……,xnが一次独立でないとき,一次従属linearly dependentであるという。Vの元y1,……,ymがあって,Vの任意の元xがy1,……,ymの一次結合で書ける,すなわちx=β1y1+……+βmymと表せるとき,Vは有限次元であるといい,さらにy1,……,ymが一次独立であるとき,それらをVの基底basisと呼ぶ。基底は必ず存在し,その数mは基底の選び方によらず一定である。このmをVの次元という。Vが有限次元でないとき,Vは無限次元であるといい,同じように基底の存在がいえる。このときも基底の集合としての濃度は基底の選び方にかかわらず一定である。
執筆者:丸山 正樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報