知恵蔵 「8K放送」の解説
8K放送
画面の縦横の長さの比率(アスペクト比)は従来通り16:9であるが、画素数は縦横ともにハイビジョン(HD)の6倍、フルハイビジョン(2K)の4倍になり画質は飛躍的に向上する。音響システムも、5.1チャンネルをはるかにしのぐ22.2マルチチャンネルとなり、高い臨場感が実現される。また、テレビ放送だけに限らず、学術・医療などの分野でも応用可能な画像技術として期待されている。
NHKにより1995年からSHVの研究が開始され、2005年愛知万博では600インチのスクリーンを使って上映された。その後、信号の国際間伝送にも成功し、12年ロンドンオリンピックに際しては、パブリックビューイングとして映像が英・米・日本国内の9カ所で一般公開された。画面の画素数は 7680×4320(3300万)画素となり、再現できる色範囲も広がることから、立体感も感じとれるといわれる。また、1秒当たりのフレーム数が120枚になれば、速く動く被写体の大画面上での「動きぼやけ」も解消されるという。このNHKによる映像信号の仕様が、国際電気通信連合の勧告としても承認されて国際規格となっている。なお、2Kと8Kの間に位置する高精細映像システムとして4K規格があり、韓国などで実証実験が進められている。
日本でもアベノミクスの戦略に歩調を合わせ、CS放送の空きチャンネルを利用した4K放送実現に、総務省がテコ入れを始めた。かつて、国内家電メーカーは地上波デジタル放送への切り替えで大きな商機を得た。しかし、現在は新興工業国メーカーの廉価な液晶テレビによる攻勢に苦戦している。このため、家電メーカーは4K対応テレビに強い関心を寄せている。その一方、新たな設備負担を強いられる民放各局は消極的であると伝えられる。4Kコンテンツの供給が乏しければ、ほとんど普及していない3D(立体)テレビの二の舞いになる懸念もある。これらの状況から、圧倒的に高い技術が求められる次世代規格ならば、日本に一日の長があるものと考えられ、8K規格に注目が集まっている。
(金谷俊秀 ライター / 2013年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報