モノやサービスの市場(財市場)と貨幣市場の同時均衡を、利子率と国民所得を基準に分析する経済手法。ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』The General Theory of Employment, Interest, and Moneyを図式・体系化しようと、ノーベル経済学賞を授与されたイギリスの理論経済学者ヒックスが1937年に考案した。
縦軸を利子率、横軸を国民所得とする座標に、投資Investmentと貯蓄Savingの関係を表すIS曲線と、流動性選好Liquidity Preferenceと貨幣供給Money Supplyの関係を表すLM曲線を設定。この交点を分析することで、モノ、サービス、貨幣の流通が過剰にならないバランスよい状態を探る。一般に公共部門の財政支出はIS曲線を押し上げ、金融緩和政策はLM曲線を引き下げる効果があり、これにより財政・金融政策が実体経済に与える効果の分析や実証などに使われることが多かった。ただし、IS-LM分析は、物価水準が硬直的であると仮定するなど、モデル設定に実体経済とは乖離(かいり)したところもあり、金融政策の長期的な有効性にも疑問の声が多い。このため近年は、IS-LM分析の影響力は薄れつつある。
[編集部]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…総需要は消費・投資・政府支出から構成されるが,消費と国民所得の間には,前者が後者に依存し,その増大とともに増加するというマクロ関係があるから,結局,国民所得の大きさは投資と政府支出の大きさにより決定されるというのが,この理論の骨子である。また,これに貨幣需給均衡による利子率決定機構を加え,国民所得・利子率の同時決定を説明する理論をIS・LM分析という。 その後,マクロ経済学は大別して二つの方向で発展してきた。…
※「ISLM分析」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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