DNAワクチン(読み)ディーエヌエーワクチン

百科事典マイペディア 「DNAワクチン」の意味・わかりやすい解説

DNAワクチン【ディーエヌエーワクチン】

ワクチンとは一般に,ある病原体への免疫力をつけるために人体に投与するもので,すでに存在する病原体やその一部などを用いる。DNAワクチンとは病原体を構成する成分の設計図であるDNAをワクチンにしたものをいい,これを筋肉内に投与すると,DNAの指示にしたがって病原体の一部であるタンパク質を合成し,そのタンパク質に対する免疫ができる。 エイズのように強い病原性があるため病原体そのものをワクチンにすることが難しい病気では,より安全性の高いワクチンとして期待されている。これまでに,チンパンジーによる実験でエイズのDNAワクチンが発表されている。 さらに,米国のメルク社はインフルエンザのDNAワクチンを開発,1996年に臨床試験を開始した。インフルエンザは突然変異によって次々と抗原を変えるため,有効なワクチンを製造することは難しいが,DNAワクチンを使うと認識できる抗原の幅が広くなる。このため,多少の変異が起きても感染を抑止できる可能性がある。
→関連項目レトロウイルス

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知恵蔵 「DNAワクチン」の解説

DNAワクチン

シトシングアニンが並んだ塩基配列(CpG配列)を持ったDNAには、免疫刺激効果がある。これを利用し、CpG配列にワクチン抗原を結合したものがDNAワクチン。このワクチンを生体に接種すると、ワクチン抗原だけを接種するよりも強い免疫が得られる。さらに、CpG配列に抗原を結合するのではなく、ワクチン抗原の遺伝子を結合したDNAワクチンも開発されている。この場合、DNAワクチンを接種することにより、ワクチン抗原遺伝子からワクチン抗原分子が細胞内で作られ、効率よく免疫が獲得できる。未来のワクチンとして期待されている。

(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)

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