eラーニング(読み)いーらーにんぐ(英語表記)e learning

日本大百科全書(ニッポニカ) 「eラーニング」の意味・わかりやすい解説

eラーニング
いーらーにんぐ
e learning

インターネットやマルチメディアなど電子媒体を利用した教育システム。広義には、eラーニングの「e(electronic、電子的)」に着目し、電子機器を利用した教育の態様すべてをさすが、狭義には、「e」を「Web」の意味と解釈し、「Web」すなわちインターネットを利用した教育、訓練のシステムをさす。一般的には、とくに断らない限り、この狭義の意味でeラーニングが語られることが多い。

[篠原文陽児]

意味と意義

eラーニングはインターネットを利用してグローバル化された利用環境のなかで、つねにオンラインの状態で使用されるシステムであり、管理者はその利用状況をLMS(Learning Management System)とよばれる「学習管理運営システム」あるいは「運営管理モジュール」によってリアルタイムに把握することができる。つまり「いつでも、どこでも、だれでも」をキャッチ・フレーズに、教育機会の公平で公正な提供と、質の高い教育内容の流通課題解決の糸口とする生涯学習社会の大きな担い手の一つである。これまで一般的であった、印刷物をおもな媒体に、教授者と学習者が同一場所に集合して対面形式で行われる従来の学習環境に対して、新たな教育の可能性と文化を創造する教育システムといえる。

[篠原文陽児]

発展の沿革

急激な経済的、技術的、社会・文化的な変化に直面して、生涯学習標榜(ひょうぼう)する教育や訓練に対する需要の増大がある。なかでも、高等教育機関は、既存フェイス・ツー・フェイス(face to face,FTF)による集合教育を強化する施策と同時に、学習意欲がある社会人や多様化し続ける学生を対象にした高等教育や訓練のためのシステムを開発するとともに、これまでにも増して生涯学習や、再教育、産業との協力体制の確立に関心を高めざるをえなくなってきている。

 こうしたなか、1996年(平成8)、文部省(現、文部科学省)に設置された「マルチメディアを活用した21世紀の高等教育の在り方に関する懇談会」は、同年7月、文部省に対し、「マルチメディアを活用した21世紀の高等教育の在り方について」を報告した。そこでは、「世界的な規模ネットワークにより、誰でも、どこからでも、既存の枠組みを超えて高度な学習の機会を得ることができるとともに、情報の収集・発信が容易となる」「学習者の興味・関心や能力に応じた学習機会の提供が可能となり、学習者が主体的に学習に取り組むことによって、問題発見・解決能力を高めることができる」ことを指摘し、マルチメディアを利用した教育の推進のために、「基盤となるハード(ネットワーク)の整備」「活用への取組を支援する環境の整備」「マルチメディアの教育利用を促進するための中核的機関の整備」をあげている。

 そのうち、中核的機関の整備の一環として、放送教育開発センターの改組を実施し、2009年(平成21)3月、放送大学のなかに、ICT(情報通信技術)活用・遠隔教育センターを設置した。

[篠原文陽児]

課題

CAIシステムやCMIシステムの成果の上に立って、社会の変化に対応したメディアの活用が求められている。とくに今日の教育では、なによりも学習者あるいは利用者の満足感、充実感など、今日的な教育目標の達成が重要である。eラーニングシステムは、その一つの態様である。同時に、システムのさらなる利便性、システムと集合教育との適切な融合(blended learning)方法、学習コンテンツの「質」の確保と制作法、人材育成と支援体制のあり方など、さまざまな課題もあわせもつ。

 また、今日では大学など高等教育機関や企業内での活用がおもに推進されているが、思考の柔軟性がもっとも求められる義務教育段階へのシステムの導入と活用の推進方策も大きな課題である。

[篠原文陽児]

『文部省編『文部時報 No.1440』(1996・ぎょうせい)』『財団法人日本視聴覚教育協会編『新たな生涯学習の展望 マルチメディアの活用による学習資源の有効活用と学習形態の多様化について』CD-ROM版(1999・財団法人日本視聴覚教育協会)』『経済協力開発機構著、香取一昭訳『ラーニング革命――IT=情報技術によって変わる高等教育』(2000・エルコ)』『通商産業省機械情報産業局情報処理振興課監修、情報処理振興事業協会(IPA)編『Learning Web Project 学びのデジタル革命――21世紀の学びを拓く最先端の教育の情報化プロジェクト』(2000・学習研究社)』『坂元昂監修、中原淳・西森年寿編著『eラーニング・マネジメント――大学の挑戦』(2003・オーム社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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