ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メディア」の意味・わかりやすい解説
メディア
Mēdia; Media
メデイア
Mēdeia
メデイア
Medeia
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翻訳|Media
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ギリシア神話の魔女。黒海の東、コルキスの王アイエテスの娘で、太陽神ヘリオスの孫。魔女キルケの姪(めい)でもある。メデイアは、アルゴ船に乗り組んだ英雄たちが、コルキスのアレス神の森で竜に守られている金の羊毛皮を奪いにきたとき、彼らのリーダーであるイアソンに恋をする。父アイエテスは、火を吐く牛で畑を耕し竜の牙(きば)を蒔(ま)けとイアソンに難題を課したが、彼女は彼に火除(よ)けの秘薬と、竜の牙から生じる戦士を滅ぼすための秘策を授け、さらに竜を眠らせて金の羊毛皮を盗み出してやった。そうしてイアソンの妻になりギリシアへ逃げるが、彼女は追っ手の船が迫ったとき、連れてきた弟アプシルトスの体を切り刻んで海上にばらまき、追っ手にそれを拾い集めさせ、船足を遅らせた。そしてイアソンの故国イオルコスに着くと、イアソンの父の仇敵(きゅうてき)ペリアスを魔法で殺した。このため彼女とイアソンは、国を追われてコリントスに逃げることになる。
のちにイアソンは、コリントス王の婿となってメデイアを捨てるが、そのとき彼女は夫との間にもうけた二児を虐殺して夫の新しい花嫁をも焼き殺す。そして竜車に乗ってアテナイ(アテネ)に逃れ、そこの王アイゲウスの妻となってメドスを生む。また、アイゲウスが他国で生ませた子テセウスが父子の対面を求めてやってきたとき、メデイアは彼を毒殺しようとして阻止され、祖国コルキスに逃げ帰る。メドスは、メディア人の名祖となった。
メデイアの物語は、ロドスのアポロニオスの『アルゴナウティカ』、エウリピデスの『メデイア』などに詳しく語られ、近代にはコルネイユの『メデ』、グリルパルツァーの『金羊毛皮』などの翻案がある。
[中務哲郎]
古代ギリシアの悲劇作家エウリピデスの悲劇。紀元前431年初演。アルゴ船物語の後日譚(ごじつたん)を素材とする。
コルキスの王女メデイアは愛するイアソンのために故国を棄(す)て、ペリアス殺しまで犯すが、コリントスに落ち着いたイアソンは蛮族出身の妻を厭(いと)い、王クレオンの娘クレウサとの結婚を策す。棄てられたメデイアは、その復讐(ふくしゅう)に新しい花嫁とその父親を殺し、またイアソンを苦しめるべく自分たちの子供をも殺して、自らはアテネへ逃亡する。
夫への復讐のため子供を殺すべきか否か逡巡(しゅんじゅん)のあげく、ついに情念(テューモス)の力に負けて殺すくだりは詩人の創作とされるが、ここからこの劇は「情念(テューモス)の悲劇」と称されてもいる。人間の内面の悲劇的葛藤(かっとう)を描くのを旨としたこの詩人にふさわしい代表的傑作である。
[丹下和彦]
『中村善也訳『メデイア』(『世界文学大系1』所収・1959・筑摩書房)』▽『呉茂一・松平千秋他訳『エウリピデス篇I』(『ギリシア悲劇全集3』所収・1960・人文書院)』
イラン高原北西部に紀元前8世紀初期、アーリア民族の一系統メディア人の建てた王国をいう。メディア人はもともとマダの国の人々とよばれるウルミア湖(イラン北西部)周辺に住む遊牧民で、前835年アッシリア王シャルマネセル3世の記録に初めてその名が登場する。建国者はエクバタナに首都を定めたディオケスとされているが、王国の体制はその子フラオルテスが築いた。アッシリアの攻撃をたびたび受け、次王キャクサレスの時代には南下してきた遊牧民スキタイに服した。約30年後キャクサレスはスキタイを倒し、前612年にはバビロニア王ナボポラサルと同盟してアッシリアを滅ぼした。その結果メディアはイランの大部分を領有する大国になった。その後、隣国リディアとの戦いが起きたが、前585年に和平が結ばれ終結した。しかし次王アスティアゲスは前549年アケメネス朝ペルシアのキロス2世に敗れ、メディアは滅亡し、ペルシアの属州となった。
[吉村作治]
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