LNGアジアプレミアム(読み)えるえぬじーあじあぷれみあむ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「LNGアジアプレミアム」の意味・わかりやすい解説

LNGアジアプレミアム
えるえぬじーあじあぷれみあむ

アジア市場におけるLNG液化天然ガス)の価格が、同じLNGあるいは天然ガスの欧米市場の価格と比べて割高になってしまうこと。あるいはその割高価格そのものをさす。近年では、2011年から2014年ごろにかけて、それぞれの市場での価格は大きく変動していたものの、アジア市場を代表する日本のLNG輸入価格はおおむね100万BTU(英国熱量単位British thermal unit)当り15~17ドル程度の推移であったのに対し、同期間のヨーロッパでの価格は8~11ドル程度、アメリカでの価格は3~4ドル程度の推移であった。とくにアメリカに対して大幅な割高となっている。この原因は、それぞれの市場でのLNGあるいは天然ガスの価格決定方式が異なるためであり、いわば市場が分断されている状況のもとで価格差が発生する構造となっている。

 日本やアジアでは、LNGの輸入価格に最大の影響を及ぼすのは原油価格である。原油価格に連動してLNGの価格を決める方式が広く用いられているため、その方式で輸入するLNGの価格はLNGの需給バランスでなく原油価格に依存して値が決まる。2011年から2014年は原油価格が100ドルを超えていた時期であり、そのため原油高で日本のLNG価格も高騰していた。一方、もっとも値差があったアメリカでは、天然ガスの価格はガスの需要供給のバランスで決まる。この時期、アメリカではシェール革命が進行し、ガスが供給過剰になったため価格が押し下げられていた。こうした原因のため、大きな価格差が発生した。この価格差は、日本経済の国際競争力を損なうことや国富流出という点で大きな問題になる。

 この状況を踏まえ、LNGアジアプレミアムを解消・改善するため、LNGの購入の仕方をくふうし、より競争力ある調達を求める努力が進められている。輸入源の多様化促進や原油価格に連動しない方式での輸入促進、より柔軟で市場の状況を反映した方式でのLNG調達などが模索されている。しかし、2021年にはLNGの需給が逼迫(ひっぱく)し、そのスポット価格が大幅に高騰した。他方、日本のLNG輸入の主体である長期契約のLNGは、その価格が原油価格連動で決まるため、スポットLNG価格ほどには上昇せず、相対的に「割安」になる、などの現象も発生している。

小山 堅 2022年1月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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