JASDAQ(読み)じゃすだっく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「JASDAQ」の意味・わかりやすい解説

JASDAQ
じゃすだっく

東京証券取引所東証)が開設・運営してきた新興企業向け株式流通市場JASDAQという名称は、英語名Japan Association of Securities Dealers Automated Quotationsの頭文字に由来する。元来は、1991年(平成3)にアメリカのNASDAQ(ナスダック)に倣って導入された株式店頭機械化システム(JASDAQシステム)をさす。

 株式流通市場としてのJASDAQは、1963年(昭和38)に、日本証券業協会により制定された店頭登録制度を母体としている。株式店頭市場への登録は、歴史的に証券取引所に上場する前の予備的な段階と位置づけられてきたが、2004年(平成16)12月に金融庁から証券取引法(現、金融商品取引法)で定める証券取引所の開設免許が、その当時店頭市場の業務を行っていた株式会社ジャスダックに交付されたことで、約55年ぶりの新設証券取引所への衣替えとなり、JASDAQ市場を運営するジャスダック証券取引所が開設された。

 ジャスダック証券取引所は、店頭登録銘柄売買仲介専門会社として1976年に設立された日本店頭証券株式会社が前身である。組織的には、日本証券業協会から、JASDAQ市場の運営を委託される形態がとられた。

 従来、JASDAQ市場は、ビジネス・モデルに特徴のある企業や成長企業、ベンチャー企業を対象に、マーケットメイク制度(流動性の低い市場での売買を成立させるため、証券会社が注文の相手方となる制度。これにより、市場の需給面での不均衡を防ぎ、証券価格の継続性・安定性が維持される)を中核とする市場として、東証のマザーズや大阪証券取引所(大証。現、大阪取引所)のヘラクレス(2000年5月開設のナスダック・ジャパンが2002年12月に改称)などと競合する関係にあった。そうした環境のなか、経営基盤の強化を目ざした大証が、ジャスダック証券取引所との経営統合を図り、2008年に子会社化、2009年には完全子会社化し、システムも大証の売買システムに一本化された。さらに大証は、2010年4月に子会社であるジャスダック証券取引所と経営統合し、同年10月にはJASDAQ、NEO(ネオ)(2007年8月に開設されたベンチャー企業向けの市場)、ヘラクレスを市場統合して、新JASDAQ市場を開設した。新JASDAQ市場は、アジア最大規模の新興市場として、信頼性、革新性、地域性・国際性という三つのコンセプトを掲げて活性化を目ざしていたが、2013年1月に東証グループと大証が経営統合し、日本取引所グループ(JPX)が設立されると、現物市場は東証に集約されたため、同年7月以降は東証により運営されることとなった。

 その後の東証JASDAQ市場は、企業の存続性を重視する「スタンダード」と、成長性を重視する「グロース」の二つに区分して運営されていたが、2022年(令和4)4月の東証再編に伴い、スタンダードは新スタンダード市場に、グロースは新グロース市場に、それぞれ吸収される形でその歴史に幕を下ろした。

[高橋 元 2023年1月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「JASDAQ」の意味・わかりやすい解説

JASDAQ
ジャスダック
Japan Association of Securities Dealers Automated Quotation

日本の成長企業,ベンチャー企業を対象とする新興市場。大阪証券取引所が運営にあたり,東京証券取引所とは異なる上場基準を有する。1963年に日本証券業協会が創設した店頭登録制度が母体で,1983年に店頭売買有価証券市場の JASDAQとなった。2004年に証券取引所の免許を取得し,店頭市場から業態を転換,ジャスダック証券取引所となった。2008年に大阪証券取引所の子会社となる。2010年,大阪証券取引所内の新興市場の一つ「ヘラクレス」と JASDAQおよび JASDAQ内の新興市場である NEOが統合,新JASDAQとなった。統合後の上場企業は約 1000社を数え,日本最大の新興市場となった。上場企業は,すでに一定の事業規模と実績をもつ企業の「JASDAQスタンダード」と,将来性が見込まれる企業の「JASDAQグロース」に分かれる。(→証券取引所

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