湖沼、海などの水の濁り方を示す一方法。直径25~30センチメートルの白色円板を水中に下ろし、円板の白色の判別ができなくなる深さを測定したときの値を透明度という。この測定法は、海中に落とした皿から考えついたといわれているが、イタリアの天文・物理学者セッキの研究により実用化したので、この白色円板を「セッキ円板」とよぶ。また、この透明度を「セッキ円板透明度」とよぶこともある。
透明度は、水中の懸濁(けんだく)物質やプランクトンの量により変動する。一つの目安として、湖沼では透明度5メートル以下がプランクトンの多い富栄養湖、7~8メートル以上が貧栄養湖とされている。水中の光は、透明度の2~2.5倍の深さで水面の約1%にまで減少する。この位置は、日平均での光合成量と消費量とが等しくなる深度である補償深度に近いとされている。
透明度が大きかった例としては、北海道の摩周湖(ましゅうこ)(41.6メートル、1931年8月測定)、ロシア連邦のバイカル湖(40.5メートル、1926年6月測定)などがあげられる。日本の湖はかつては澄んだものが多く、秋田県の田沢湖、福島県の猪苗代湖(いなわしろこ)、鹿児島県の池田湖などで20メートル以上の値が得られたことがあった。しかし、現在ではこれらの湖の透明度は5~6メートルの場合が多い。バイカル湖の現在の値は30~40メートル以下、摩周湖では30メートル以下である。
海洋でもっとも澄んでいる海域は、大西洋のサルガッソー海であり、透明度は66.5メートルに達したことがある。日本近海では、黒潮海域の透明度が30~34メートル、親潮海域では10~15メートル、日本海では20~30メートルである。また、湾内では数メートル以下である。
透明度は測定法が簡単であるため、陸水学、海洋学で広く用いられ、人工衛星資料より透明度を推定することも行われている。100年以上にわたって測定法に変更がなく、かつデータが多い透明度は、湖水の歴史的な変化あるいは湖沼相互間の比較検討の面でも優れた指標になっている。なお、水質検査項目にある透視度は、おもに流れがある河川やごく浅い池で用いられ、透明度とは違う測定方法なので注意が必要である。
[新井 正]
気象学の分野では、大気の透明の度合いをいう。海水や湖水など水の透明度と区別するため、大気透明度とよぶことがある。透明度は気象学ではあまり用いられないため、その表現方法として、視程、視距離、透過率、混濁係数、混濁因子などがあり、とくに定まったものはない。これらのうち、視程がもっとも一般的である。ちなみに、非常に遠方の物体が細部にわたりきわめて明瞭(めいりょう)に見える状態をとくに大気透明とよぶ。
[股野宏志]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 (財)日本水路協会 海洋情報研究センター海の事典について 情報
出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報
…湖水の透明さは,水を濁らせる有色物質と懸濁物質による光の吸収減衰により左右される。湖水の濁り度を定量的に測るものさしとしては,透明度transparencyが一般的に用いられている。これは直径約30cmの白色円板(考案者の名を用いセッキ円板ともいう)を水中に下げていき,水上から肉眼で円板が見えなくなる限界の深さで示す。…
※「透明度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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