日本大百科全書(ニッポニカ) 「SHRDLU」の意味・わかりやすい解説
SHRDLU
しゅるどぅるー
テリー・ウィノグラードTerry Winograd(1946― )によって開発された、積み木の世界で人間と対話する人工知能(AI)プログラム(『言語理解の構造』1975・産業図書)。SHRDLUの名は、英語のアルファベットを出現頻度の多い順に並べたリスト、ETAOINSHRDLU…からとっている。初の本格的対話システムで、コンピュータシミュレーション上でロボットハンドが人間に命令されたとおりに積み木を動かしたり、質問に答えたりするものである。当時の技術では音声対話はできず、テキストによる対話であったが、積み木の状況は画面上に描画されていた。
ユーザーはSHRDLUに英語で指示を出し、端末の画面上に存在するさまざまな物体(ブロック、円錐、球など)を動かしたり、それらに関する質問をすることができる。SHRDLUは積み木の世界に関する必要な知識を有しており、たとえばブロックは積み重ねることができるが、円錐の上にはモノは置けないことなどは推論できる。また、積み木の世界に関しては50種類ほど単語で記述できる。たとえば「ブロック(block)」「円錐(cone)」などの名詞や、「XをYの上に置け(place X on Y)」「Zまで動かせ(move to Z)」といった動詞、「大きい(big)」「青い(blue)」といった形容詞などである。
また、「緑色の円錐を赤いブロックの上に置け(put the green cone on the red block)」と指示した後、「その円錐を取り除け(take the cone off)」と指示することができる。「その(the)」で指示された対象は対話の文脈から判断される。さらに、「その円錐を動かす前に何かを持ち上げたか?(did you pick up anything before the cone?)」というような過去の行為に関する質問もできる。
[中島秀之 2019年8月20日]