Sturge-Weber症候群

内科学 第10版 の解説

Sturge-Weber症候群(ファコマトーシス(母斑症、神経皮膚症候群))

(6)Sturge-Weber症候群
概念
 顔面の三叉神経第1枝領域を含むポートワイン血管腫と,同側の脳軟膜の血管腫と眼脈絡膜血管腫を生じ,神経症状および眼症状を呈する.ほかの母斑症とは異なり,患者は孤発例であり遺伝性は明らかではない.
病因・病態
 脳軟膜の毛細血管静脈の血管腫が,顔面の母斑と同側の,頭頂・後頭・側頭部に存在し,同部の皮質循環不全により萎縮をきたす.約10%では,両側性に血管腫を認める.組織像として,障害された皮質に石灰化がみられるのが特徴的である.
臨床症状
1)顔面ポートワイン血管腫:
生下時より認められ,圧迫によりやや退色傾向がある.片側三叉神経第1枝領域を含み,さらに広範に広がり対側に及ぶこともある.
2)神経症状:
乳幼児期より高率にてんかんを認め,通常は顔面血管腫と反対側の部分痙攣である.半身麻痺は通常は痙攣後に一過性にみられ,発作を繰り返すとともに症状は進行する.てんかん合併例では精神遅滞もしばしば認める.
3)眼症状:
脈絡膜に血管腫が存在する場合には,緑内障,牛眼を合併する.
検査成績
1)頭部CT,MRI:
MRIでは造影による脳表と同側の側脳室内脈絡叢の造影効果の増強を認め,脳軟膜の血管腫の診断が可能である.また,幼児期以降では皮質の萎縮像や,CTでは脳表の石灰化像が認められる(図15-13-15).
2)頭部単純X線:
血管腫および皮質の石灰化が,平行に走る2本線(tram sign)として観察される像が有名である.
治療
 顔面の血管腫に対するレーザー治療を行う.乳児期にてんかんを合併した例では,薬剤による治療を積極的に行う.てんかんの難治例は,精神遅滞をきたすという視点から,早期の病変部の脳外科的切除による予後の改善も試みられている.[岡 明]
■文献
Gutmann DH, Aylsworth A, et al: The diagnostic evaluation and multidisciplinary management of neurofibromatosis 1 and neurofibromatosis 2. JAMA, 278: 51-57, 1997.
Neurofibromatosis. Conference statement. National Institutes of Health Consensus Development Conference. Arch Neurol, 45: 575-578, 1988.
Roach ES, Gomez MR, et al: Tuberous sclerosis complex consensus conference: revised clinical diagnostic criteria. J Child Neurol, 13: 624-628, 1998.
執印太郎:フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病診療ガイドライン,中外医学社,東京,2011.
Thiele EA, Korf BR: Phakomatoses and allied conditions. In: Swaiman’s Pediatirc Neurology: Principles and Practice, 4th ed (Swaiman KF, Ashwal S, et al eds), pp497-517, Mosby, Philadelphia, 2012.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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