家庭医学館 「限局性強皮症」の解説
げんきょくせいきょうひしょう【限局性強皮症 Localized Scleroderma】
強皮症(きょうひしょう)のうち、皮膚だけに線維組織(せんいそしき)が増え、皮膚がかたくなる病気です。
全身性の強皮症(全身性硬化症(ぜんしんせいこうかしょう)(「強皮症(全身性硬化症)」))とはちがう病気と考えられています。
全身性の強皮症にみられるレイノー現象(「強皮症(全身性硬化症)」のレイノー現象ほか、多彩な症状)や内臓の病変はみられず、膠原病(こうげんびょう)のなかには含まれません。
皮膚硬化が斑状(はんじょう)にできるもの(モルフェアと呼び、この病気全体の40%はこのタイプです)と、線状・帯状にできるものの2つのタイプに大きく分けられます。
硬化は、ふつうは単独で現われますが、多発することもあります。若年者に多くみられる病気で、とくに線状・帯状のタイプは、10歳代までに発病します。
患者さんの男女比は、約1対2と、女性に多いのですが、全身性の強皮症が圧倒的に女性に多いのと比べると、差はわずかなものです。
[症状]
さまざまの皮膚症状が現われます。
■斑状限局性強皮症(はんじょうげんきょくせいきょうひしょう)(モルフェア)
指先から手のひらの大きさまでの円形ないし楕円形(だえんけい)で、境界がはっきりした淡紅色(たんこうしょく)のやや盛り上がった斑(はん)(発疹(ほっしん))ができます。斑の中心部には、皮膚の硬化、萎縮(いしゅく)(へこむことが多い)、色素脱失(皮膚の色が白くなる)がみられます。背中、胸、腹部によくできます。
■線状限局性強皮症(せんじょうげんきょくせいきょうひしょう)・帯状(たいじょう)限局性強皮症
頭部では線状に、四肢(しし)(手足)では帯状に皮膚硬化がみられます。線状の硬化のなかには、創傷状強皮症(そうしょうじょうきょうひしょう)という、前頭部から前額部(ぜんがくぶ)にかけての正中線(せいちゅうせん)にそって、縦に刀の傷のように皮膚のへこみがみられるものが有名です。顔の片側に、皮膚の萎縮をともなうことがあります。四肢では、縦に線状や帯状に皮膚硬化がみられます。表面は平滑で、光沢があり、時間がたつと萎縮してへこんできます。
また、汎発型限局性強皮症(はんぱつがたげんきょくせいきょうひしょう)といって、斑状あるいは線状の硬化が、からだの左右両側にたくさんできることもあります。
限局性強皮症では、レイノー現象はみられず、内臓の病変もありません。まれに限局性強皮症が全身性の強皮症に合併することもあります。
[検査と診断]
皮膚の独特な症状によって診断されます。皮膚の一部を切りとって顕微鏡でみる(生検(せいけん))と、診断はいっそう確実になります。
皮膚にかぎられる病気ですから、血液や尿の検査に異常はみられません。
この病気の発症に免疫異常の関与が示唆され、抗核抗体(こうかくこうたい)は約半数の例で陽性となります。
[治療]
治療しなくても、数年で自然に消えることが多いものですが、局所療法としてステロイド軟膏(なんこう)、1%塩酸ピロカルピン軟膏、0.2%塩酸ヒスタミン軟膏などが用いられます。しかし、創傷状強皮症は治りにくいので、形成外科による手術が行なわれます。
[日常生活の注意]
特別なものはありませんが、10歳代の場合は、外観からくる精神的な問題のケアがむしろたいせつです。