アガタ(その他表記)Agatha

改訂新版 世界大百科事典 「アガタ」の意味・わかりやすい解説

アガタ
Agatha

3世紀のシチリア島カターニア出身の聖女。伝説によれば,その名はギリシア語の〈神の聖女〉〈天のしもべ〉などに由来する。総督の,自分の妃となり異教神へ供犠せよ,との命令を拒否して拷問にあう。預けられた娼家では奇跡的に純潔を保ち,やっとこ乳房を切り取られた傷は,幻にペテロが出現して癒された。焼けた石の上をころがす刑も地震が起きて免れた。苦しみのあまり自ら神に死を願い,250年ころ殉教。埋葬時に天使が現れ,彼女がこの地方を救うと予告した。翌年エトナ山が爆発した際,聖遺物ベールの力でカターニアは溶岩流から救われ,同市の守護聖人となったという。乳母,釣鐘(形が乳房と類似)職人の守護聖人で,乳房の病気や火災を防ぐとされる。美術における持物は,切り取られた乳房を載せた盆(皿)。ときに,伝説にちなんでベール,やっとこなども伴う。拷問やペテロ出現の場面としても表される。祝日は2月5日。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アガタ」の意味・わかりやすい解説

アガタ
Agatha

3世紀頃にシチリア島のカタニアで殉教した聖女。役人から背教を迫られたが,これを拒み,拷問によって殉教したといわれる。彼女についてはギリシア語およびラテン語による多くの殉教物語が作られた。祝日2月5日。

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世界大百科事典(旧版)内のアガタの言及

【口寄せ】より

…これに対し死霊の憑依する民間巫女は,なお活発に機能し,地域住民の信仰的要求にこたえている。それらはイタコ,イチコ,アズサ(梓巫女),アガタ,オカミン,オカミサマ,オナカマ,ワカ,マンチ,ホウニンなど地域ごとに名称を異にしているが,もっとも盛んなのは青森県を中心に本州北東部に分布するイタコと,沖縄を中心とする南島にみるユタである。口寄せには神霊ののりうつるカミオロシと死霊の憑依するホトケオロシがあり,前者を神口(かみくち),後者を死口(しにくち)という。…

【守護聖人】より

…たとえば幼児イエスを背負って川を渡ったとされる伝説的巨人クリストフォルスは救難聖人auxiliary saints(緊急の際に,信者がその名を呼んで代願を求める聖人で,通常14人があてられる)の一人で,船乗りの守護聖人とされている。またアガタは拷問ののちに火で焼かれて殉教したために,火事から人々を守る守護聖人とされている。またニベルのゲルトルートGertrud von Nivelles(626‐659,祝日3月17日)は,病人や巡礼,捕らわれた人のためにつくしたことにより,中世を通じて病院の守護聖人とされ,のちにはネズミなどの被害から穀物を守る聖人ともなっている。…

【乳】より

…乳母はヨーロッパにも日本にも古くからいたが,乳の出が悪い場合には,もらい乳をしなければならない場合もあるので,乳母に託することを一概に悪いとはいえない。乳汁分泌の少ない婦人たちにとって,キリスト教圏では聖女アガタが守護聖人となっている。双の乳房を切り落とされるという拷問に耐え,一夜にしてもとどおりの胸にもどった彼女の奇跡が,乳の出を促すための祈りの対象となった契機である。…

【乳房】より

…つとにアイスキュロスの《縛られたプロメテウス》にも語られている勇猛なアマゾン族は,弓を引くのにじゃまな右の乳房を切り落としたという。聖女アガタはキリスト教徒迫害に耐えて,乳房を切除する拷問を受けたが,一夜にしてもとの胸にもどる奇跡を見せた。現代医学では,既婚女性の乳房を乳癌のため切除する際に,夫の同意も得ることを原則とする。…

※「アガタ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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