翻訳|apostasy
信じていた宗教から他の宗教に転ずること,あるいは非宗教的立場に移行すること。〈棄教〉ともいい,いずれも放棄された宗教の側からの非難をこめた表現として用いられることが多い。主としてキリスト教世界で大きな問題とされた。古代ローマでは皇帝がしばしばキリスト教徒を迫害し,多くの背教者を生じた。はじめ教会は,迫害によって背教した信徒は次の迫害時に殉教すればその罪が許されるとしたが,やがて悔悛することによってふたたび教会に復帰する道が開かれた。しかしルネサンスや宗教改革を経た近代になると,背教は個人の思想の変化として自発的に選びとられるようになり,それ以前のように激しく非難される対象にはならなくなった。日本では16世紀中期以降カトリック・キリスト教が伝えられたが,やがてきびしい迫害にあい,多くの背教者がでた。いわゆる踏絵による〈転びキリシタン〉がそれである。しかし他面,江戸時代になるとキリスト教の禁圧にもかかわらず,表面的には棄教を装いつつ,ひそかにマリア観音などをつくって信仰を持続したキリシタン(隠れキリシタン)もいた。これは偽装的な背教の例といえよう。
→改宗
執筆者:山折 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
いままでの信仰を自発的あるいは強制されて捨て去ること。この場合、無信仰への移行と他の信仰への回心との二つの場合があるが、いずれにしろそれまでの信仰の立場からみた用語であり、裏切り行為としての非難の意味が含まれている。一般に背教は単なる個人的動機としてよりは政治的・社会的脈絡と関連して問題となる。背教者は市民権を剥奪(はくだつ)され(ユダヤ教、古代宗教)、教会組織や共同社会からの追放(キリスト教、イスラム教)が伴う。したがって、政教分離が進展すると背教問題は比重が軽くなる。また複数の宗教の競合が背教の主要条件となるため、排他性の濃い一神教的宗教の場合にとりわけその意味が重い。
[赤池憲昭]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…後者は痛切な人生体験によって自己の属する宗教に疑問をもつことから生ずるもので,いわゆる〈回心〉に基づいてなされることが多い。西欧世界では,カトリックとプロテスタント相互の間で多くみられ,とくにカトリックから他派へ移る場合は棄教,離教,背教などと呼ばれる。日本では,近世初期のキリシタン弾圧時代に多くの改宗‐棄教者(〈転(ころ)びキリシタン〉)をだした。…
※「背教」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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