翻訳|triathlon
アメリカ発祥のスポーツ。1人の競技者がスイム(水泳)、バイク(自転車)、ラン(ランニング)の3種目を連続して行いタイムを競う。種目を転換する時間も競技時間に含まれる。「トライアスロン」は造語で、ラテン語で「3」を示す「トライ」と英語で「競技」を示す「アスロン」を組み合わせたものである。
1970年代前半、カリフォルニアのサン・ディエゴ周辺で、泳ぐ、走るといったいくつかの種目を組み合わせて行う「クロススポーツ」が盛んに行われており、これが起源といわれる。なかでも1974年9月25日に行われた「ミッションベイ・トライアスロン」が「トライアスロン」という名称を使った初めての大会である。しかし、ラン、バイク、スイムの順で行われるなど、現在のスタイルとは大きく異なっていた。
現在のスタイルの基礎となったのは「アイアンマン」である。ハワイの海兵隊員ジョン・コリンズJohn Collins(1936― )らが、1977年2月、三つの種目の競技者のいずれがもっとも偉大であるかという議論となり、その結論を導き出すべく、当時ハワイで行われていた2.4マイルの「ワイキキ・ラフ・ウォーター・スイム」、112マイルのサイクルレース「アラウンド・オアフ」、42.195キロメートルの「ホノルル・マラソン」のそれぞれの距離を1年後に連続して行うと宣言し、「アイアンマン」と名づけた。コリンズは以前にミッションベイ・トライアスロンに参加しており、その体験がアイアンマンを構想する元となったといわれている。翌1978年2月18日、コリンズ自身を含む15名が参加し、オアフ島を舞台に「アイアンマン・ハワイ」が開催された。その後、1980年のアイアンマン・ハワイが全米にテレビ放映され、大きな話題となり一気に広まり、オセアニア、ヨーロッパへと普及していった。
アイアンマンの競技距離は、キロメートル単位に換算するとスイム3.8キロメートル、バイク180.2キロメートル、ラン42.2キロメートルであるが、1983年に当時のアメリカトライアスロン連盟が、スイム1.5キロメートル、バイク40キロメートル、ラン10キロメートルの「ショート・ディスタンス」を制定した。これは従来のアイアンマンの距離よりも短いのでこのようによばれたのだが、後にオリンピック種目に採用され、「オリンピック・ディスタンス」という名称でよばれるようになった。この距離はより参加しやすく、また競技性も高まり、トップ選手から一般の参加者まで広く人気を博し、現在ではこの距離の大会がもっとも多く開催されている。
このほか、スイム1.9キロメートル、バイク90.1キロメートル、ラン21.1キロメートル程度の「ミドル・ディスタンス」もしくは「アイアンマン70.3」、スイム0.75キロメートル、バイク20キロメートル、ラン5キロメートルの「スプリント・ディスタンス」など、おもに4種類の規格が主流となっている。ただし、これに当てはまらない独自の距離設定で行われる大会も少なくない。開催地の自然条件にあわせた大会開催スタイルもこのスポーツならではのものである。
日本人のアイアンマン初参加は1981年(昭和56)2月の第4回アイアンマン・ハワイ大会で、8名が参加し、完走した。これが国内のローカル紙で報道されたことがきっかけとなり、8月に参加者のアドバイスを生かし、鳥取県で国内初の「皆生(かいけ)トライアスロン」が開催された。第1回大会は、スイム2.5キロメートル、バイク70キロメートル、ラン25.5キロメートルで行われ、53名(うち女性2名)が完走した。1985年、沖縄県宮古島(みやこじま)で「全日本トライアスロン宮古島大会」が開催され、NHKが断続的ながらテレビ中継したことで、日本でも普及に弾みがついた。
1989年には国際トライアスロン連合(ITU:International Triathlon Union)が設立され、第1回ITU世界選手権大会がフランスのアビニョンで開催された。さらに、2000年のオリンピック・シドニー大会から正式種目となっているほか、国内でも2016年(平成28)の国民体育大会から正式種目になっている。2017年度時点では、日本で年間約300もの大会が開催され、愛好者の人口も約40万人となっている。歴史は長くないが、確実に普及、発展を遂げているスポーツである。
[白戸太朗 2019年4月16日]
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水泳,自転車,ランニングの3種目を連続して行い,その総合タイムを競う耐久レース。競技はふつう安全上の理由からこの順番で行われる。〈トライアスロン〉という言葉はギリシア語で3を意味する〈トライ〉と,競技を意味する〈アスロン〉から成る合成語。距離は大会ごとに異なる。この競技の発祥は1970年代のアメリカであり,日本では81年8月に初の大会が鳥取県米子市で開かれた。89年には世界統一組織である国際トライアスロン連合(ITU)が設立され,第1回世界選手権大会が開かれた。オリンピックでは,2000年のシドニー大会から正式種目となった。ちなみにオリンピックの種目内容は,水泳1.5km,自転車40km,ランニング10kmである。
執筆者:編集部
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(吉田章 筑波大学教授 / 2007年)
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…人類の基本的な動作である走る,跳ぶ,投げるの要素をスポーツ化したもので,独立した多数種目を包含する競技。格闘技のように単に勝敗を争うのではなく,時間や距離などの記録への挑戦も含むところに特徴がある。近代陸上競技発祥の地イギリスやイギリス連邦諸国ではathleticsと称しているが,これがスポーツ,体育一般をさすこともあるため,アメリカ流のtrack and fieldを使うことが多い。ドイツ語のLeichtathletikに相当する。…
…人類の基本的な動作である走る,跳ぶ,投げるの要素をスポーツ化したもので,独立した多数種目を包含する競技。格闘技のように単に勝敗を争うのではなく,時間や距離などの記録への挑戦も含むところに特徴がある。近代陸上競技発祥の地イギリスやイギリス連邦諸国ではathleticsと称しているが,これがスポーツ,体育一般をさすこともあるため,アメリカ流のtrack and fieldを使うことが多い。ドイツ語のLeichtathletikに相当する。…
※「トライアスロン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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