コリンズ(読み)こりんず(英語表記)John Anthony Collins

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コリンズ」の意味・わかりやすい解説

コリンズ
Collins, Francis

[生]1950.4.14. バージニア,スタントン
アメリカ合衆国の遺伝学者。フルネーム Francis Sellers Collins。遺伝子疾患の原因遺伝子を発見し,アメリカの国立衛生研究所 NIHの研究コンソーシアムの責任者としてヒトゲノム解析計画 HGPを主導した。学校に通わず自宅で母親に教育を受け,幼い頃から科学に関心を示した。1970年バージニア大学卒業後,1974年エール大学で修士号,博士号を,1977年ノースカロライナ大学チャペルヒル校で医学博士号を取得した。1984年ミシガン大学アナーバー校の准教授に就任。1989年に嚢胞性線維症の原因遺伝子を特定したと発表した。1990年,神経内で腫瘍が成長する遺伝子疾患である神経線維腫症を引き起こす遺伝子を発見。1993年には神経変性疾患であるハンチントン舞踏病の原因遺伝子を明らかにした。1993年ミシガン大学を離れて NIHの国立ヒトゲノム研究所 NHGRI所長に就任,2008年まで務めた。2000年6月26日,コリンズと,NIHの元職員でバイオテクノロジー企業セレラ・ジェノミクスの会長 J.クレイグ・ベンター,アメリカのビル・クリントン大統領が,官民協力を通じてヒトゲノムDNA(デオキシリボ核酸)配列の概要解読を終了したと発表した。2003年4月には詳細な解析も完了し,HGPは終了した。NIH所長への就任が上院議会で承認されたのち,2009年10月にローマ法王ベネディクツス16世から法王庁科学アカデミー会員に任命された。

コリンズ
Collins, Michael

[生]1930.10.31. ローマ
アメリカ合衆国の宇宙飛行士。1969年7月20日,史上初の月着陸に成功した『アポロ』11号の司令船パイロット。1952年陸軍士官学校を卒業,エドワーズ空軍基地のテストパイロットとなる。1963年,第3期宇宙飛行士の一人に選ばれた。1966年7月,『ジェミニ』10号にジョン・W.ヤングとともに乗り組み,地球を 43周し,標的の『アジェナ』衛星とのドッキング宇宙遊泳を行なった。史上初の月着陸ではニール・アームストロングエドウィン・E.オルドリン両宇宙飛行士が月面で活動中,司令船にとどまり,月のまわりを軌道飛行しながら種々の観測を行なった。地球へ帰還後,宇宙飛行士を引退,1969年広報担当国務次官補となった。1971年国立航空宇宙博物館の館長に就任,1978年からはスミソニアン・インスティテューションの次官を務めた。(→ジェミニ計画アポロ計画

コリンズ
Collins, Michael

[生]1890.10.16. コーク,クロナキルティー
[没]1922.8.22. コーク付近
アイルランドの政治家。富裕な農家に生れ,1906年官吏となってロンドンに居住。 09年アイルランド共和国同盟 IRBに参加。 16年アイルランドに戻り,同年4月の復活祭蜂起でアイルランド義勇軍総司令官 P.ピアースのもとで戦い,捕われたが同年 12月に釈放。 18年シン・フェーン党の議員としてイギリス議会に選出されたが,同党議員とともにダブリンアイルランド国民議会を創設,アイルランド共和国の成立を宣言して,18年その政府の内相,19年経済相,さらに新設のアイルランド共和軍 IRAの司令官として反英ゲリラ活動を行い,イギリス官憲を悩ませた。 21年アイルランド自由国成立のためのイギリス=アイルランド条約締結には,A.グリフィスとともに活躍した。 22年アイルランド自由国政府の正式樹立とともに首相となったが,過激派との間に内紛を生じ,IRAの反乱の根拠地ムンスターからコークに戻る途中,過激派に暗殺された。

コリンズ
Collins, William

[生]1721.12.25. サセックス,チチェスター
[没]1759.6.12. サセックス,チチェスター
イギリスの詩人。チチェスター市長をつとめた裕福な帽子商の子で,ウィンチェスター校を経てオックスフォード大学に学んだ。在学中『ペルシア牧歌集』 Persian Eclogues (1742) を出版。卒業後ロンドンへ出て『オード集』 Odes (47) を刊行。このなかには有名な『夕べに寄せる』 Ode to Eveningをはじめ,『1746年の年頭に詠める』 Ode Written in the Year 1746,『簡素に寄せる』 Ode to Simplicityなどの名作が含まれ,詩集の売行きはすこぶる悪かったが,18世紀後半の詩壇にロマン的な新風を吹込む先駆者の役割を演じることになった。最もロマン的な作品『スコットランド高地地方の俗信について』 Ode on the Popular Superstitions of the Highlands of Scotland (49) は未定稿のまま死後出版された。晩年精神病となり郷里に帰って死ぬまで妹アンの看護を受けた。

コリンズ
Collins, Anthony

[生]1676.6.21. ヘストン
[没]1729.12.13. ロンドン
イギリスの理神論者,自由思想家。ケンブリッジ大学卒業後,J.ロックとの交友から大きな影響を受ける。自由思想家としての彼の思想は,非正統的ではあるが,無神論でも不可知論でもない。彼は理性をこえたものと理性に反したものの区別を排し,神の啓示は人間が本来的にもっている神の観念に一致すべきだと考えた。また聖書の解釈については,自由な解釈を唱え,哲学においては必然論の立場に立って決定論を唱えた。さらに人間の霊魂は物質的なもので,不死ではないと考え,この点で S.クラークと論争が行われた。主著には,『自由思考について』A Discourse of Free-Thinking (1713) ,『人間の自由と必然について』 Inquiry concerning Human Liberty and Necessity (15) など。

コリンズ
Collins, (William) Wilkie

[生]1824.1.8. ロンドン
[没]1889.9.23. ロンドン
イギリスの小説家。リンカーン法学院に学んだが,歴史小説や絵にうちこみ,パリにおもむく。 1851年 C.ディケンズの知遇を得,彼の編集する雑誌に作品を発表した。この先輩作家の『二都物語』などのサスペンスに富んだプロットには明らかにコリンズの影響がみられる。代表作『白衣の女』 The Woman in White (1860) は,ミステリアスな筋立てのうちに,華麗な悪人の典型フォスコ伯など忘れがたい人物像を含む。『月長石』 The Moonstone (68) は,イギリス最初の探偵小説といわれ,ポーの作品ほど推理は強調されないが,ばらが趣味のカフ警部という人間味のある探偵像を世に送り,盗まれた宝石の呪いというテーマはのちに多くの作品で用いられた。

コリンズ
Collins, Henry Bascom, Jr.

[生]1899.4.9. アラバマ,ジェニーバ
[没]1987.10.21.
アメリカの人類学者。スミソニアン博物館人類学部門の重鎮。 1927年以来,アラスカ,カナダなど極北部の学術調査に専念。エスキモーの起源と系統に関するすぐれた研究者として著名。 36年にはデンマーク王立アカデミーからその功績をたたえる金メダルを授与された。主著"The Origin and Antiquity of the Eskimo" (1951) ,"Archaeological Work in Arctic Canada" (57) 。

コリンズ
Collins, Joseph Lawton

[生]1896.5.1. アメリカ,ニューオーリンズ
[没]1987.9.12. アメリカ,ワシントンD.C.
アメリカの陸軍軍人。第2次世界大戦中,第7軍司令官として,ノルマンディーに上陸し,シェルブールを攻略,ジークフリート線を突破してルールに進撃,エルベ川で西部から進んだ連合軍として初めてソ連軍と連絡した。 1948年大将。 49~53年陸軍幕僚長。

コリンズ
Collins, John Churton

[生]1848
[没]1908
イギリスの文学研究者。イギリス文学をオックスフォード大学の正式課目と認定させることに努力した。『イギリス文学の研究』 The Study of English Literature (1891) のほか,多くの編著がある。

コリンズ
Collins, José

[生]1887
[没]1958
イギリスの女優,歌手。ミュージックホールの芸人 L.コリンズの娘。美声の歌手として,おもにイギリス,アメリカのホールやミュージカルに出演。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コリンズ」の意味・わかりやすい解説

コリンズ(John Anthony Collins)
こりんず
John Anthony Collins
(1676―1729)

イギリスの理神論者、自由思想家。ケンブリッジ大学に学ぶ。晩年のロックと親交を結び、彼の遺産管理人の一人となる。彼は、あらゆる主題、とりわけ宗教について理性による自由な吟味と探究の必要性を強調する。認識能力の分類ではロックを踏襲し、蓋然(がいぜん)的知識に属する信仰においても自然本性である理性に反することはできないとし、この点で秘蹟(ひせき)や奇跡などを退ける。自由な思考と宗教的寛容の立場から既成宗教と狂信を厳しく批判するが、意志の自由については、他の多くの理神論者と異なり、決定論をとる。彼の聖書の自由な吟味は後のヒュームらの宗教の歴史的批判への道を開くことになった。主著に『自由思想論』(1713)、『人間の自由と必然についての哲学的研究』(1715)などがある。

[小池英光 2015年7月21日]


コリンズ(William Wilkie Collins)
こりんず
William Wilkie Collins
(1824―1889)

イギリスの小説家。風景画家ウィリアム・コリンズWilliam Collins(1788―1847)の長男。少年時ブルワー・リットンに心酔し、小説『アントニーナ』(1850)を書く。1851年弁護士資格を獲得。同年ディケンズを知り、彼の雑誌に寄稿、この親交を通じて互いに影響を受ける。コリンズの小説は緻密(ちみつ)な筋立てに優れ、『白衣の女』(1860)は圧倒的な世評を得た。目の痛風に悩まされ、そのため体験したアヘン常用癖が『月長石』(1868)の謎(なぞ)解きの鍵(かぎ)に生かされている。

[佐野 晃]

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