ニホンウナギ(読み)にほんうなぎ(その他表記)Anguilla japonica

共同通信ニュース用語解説 「ニホンウナギ」の解説

ニホンウナギ

日本や中国、韓国台湾などに分布するウナギ。日本から約2千キロ離れたマリアナ諸島付近の海域産卵場所とされるが、生態に謎が多い。日本沿岸に流れ着く稚魚(シラスウナギ)は国内で養殖に利用されている。近年は採捕量減少による価格高騰で稚魚は「白いダイヤ」とも呼ばれる。密漁密輸が後を絶たない。高知県では昨年3月、シラスウナギの販売で違法に約6億円を稼いだ会社の経営に、特定抗争指定暴力団山口組系組員が関与していたことが判明した。

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知恵蔵 「ニホンウナギ」の解説

ニホンウナギ

日本で食用にされているウナギで、硬骨魚綱ウナギ目ウナギ科ウナギ属。日本、台湾、中国、韓国など東アジア全体に広く分布する。ウナギ属としては他に、オオウナギ、アメリカウナギ、ヨーロッパウナギなど亜種を含めて19種が、世界の温帯から熱帯域に存在する。
ウナギ目の仲間は、アナゴ類、ウツボ類などほとんどの種が海洋性で、ウナギ類も成魚は淡水域や汽水域に生息するが、産卵時には海に回遊する。孵化(ふか)後は、ウナギ目に特徴的なレプトケファルス(葉形幼生)と呼ばれる幼生になる。
レプトケファルスは、柳の葉のような体型で、海流にのって長距離を運ばれるのに適している。生後3~4カ月たつと透明なウナギの稚魚、いわゆるシラスウナギに変態する。この時、体長は数ミリメートル縮んで、成魚に似た細長い体型となり、胸びれやウロコ、採食に適した口などが発達する。シラスウナギは河川や湖に遡上(そじょう)し、5~10年を淡水域で過ごすうちに成魚となり、産卵のために海に降りる。なお、ニホンウナギの養殖には、回遊中のシラスウナギを捕獲して用いている。
これまで、ウナギ類の産卵場所、産卵時期は正確に特定されておらず、古代ギリシャのアリストテレスが著書「動物誌」の中で「ウナギは泥の中から自然発生する」と書いて以来、2000年にわたる謎とされてきた。ニホンウナギの生態は、1973年に東京大学海洋研究所(現・東京大学大気海洋研究所)の研究船「白鳳(はくほう)丸」によって、本格的なウナギ産卵場調査が行われたのを始まりに研究が続けられ、91年には、マリアナ諸島西方海域で体長約10 ミリメートルのレプトケファルス約1000尾が採集されたことにより、産卵場はほぼ特定されていた。また耳石を使って日齢を解析した結果から、産卵は各月の新月に一斉に起こるとの新月仮説が唱えられた。
2009年、新月の2日前である5月22日に、東京大学海洋研究所と水産総合研究センターの調査船団は、西マリアナ海嶺(かいれい)南端部の海山域で、直径平均1.6ミリメートルのウナギ卵 31粒を採集。遺伝子解析によりニホンウナギと確認され、産卵は新月3日前の夜間に水深約200メートル前後で行われたと推定された。天然ウナギの卵が採取されたのは世界初。09年6月には、卵が採取された海域において、精巣が発達した雄ウナギと産卵可能な卵巣を持つ雌ウナギも採取された。
この発見は、近年激減しているウナギ資源の保全管理や、養殖用稚魚の大量生産技術の開発につながると期待されている。

(葛西奈津子  フリーランスライター / 2011年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニホンウナギ」の意味・わかりやすい解説

ニホンウナギ
Anguilla japonica; Japanese eel

ウナギ目ウナギ科の魚。体長最大約 1.5m。体は細長く円筒状,尾部は側扁する。背部は暗色,腹部は白色。鱗は皮下に埋没していて,体表は分泌される粘液でぬるぬるしている。5~10年ほど淡水域で過ごし,産卵のため海に下る。これを「下りウナギ」と称する。産卵はマリアナ諸島西方の海山域で行なわれる。仔魚はレプトケファルスといい,細長い木の葉状をしている。北赤道海流黒潮に輸送され,体長 5~6cmでシラスウナギに変態すると黒潮を降り,沖合いから岸へ接岸回遊をする。河口に達したシラスウナギはやがて色素が発達したクロコとなって川を上る。シラスウナギを捕えて養殖する。おもに蒲焼で食される。日本,朝鮮半島,中国の河川の中・下流,湖沼,河口域,沿岸海域に分布する。乱獲や河川環境の悪化などが原因で資源が減少したため,2013年に環境省から,2014年に国際自然保護連合 IUCNから絶滅危惧種に指定された。

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