整理解雇(読み)セイリカイコ

デジタル大辞泉 「整理解雇」の意味・読み・例文・類語

せいり‐かいこ【整理解雇】

経営危機下にある企業が、人件費を減らし、事業の維持継続を図るために一方的に雇用契約を解除すること。整理解雇を行うためには、(1)人員整理必要性があるか、(2)解雇回避のための努力をしたか、(3)被解雇者の選定基準に合理性はあるか、(4)解雇手続きに妥当性はあるか、の4要件を満たす必要があるとされ、そうでない場合は不当解雇となる可能性がある。→懲戒解雇リストラ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「整理解雇」の意味・わかりやすい解説

整理解雇
せいりかいこ

経営の悪化した企業が人員削減のために行う解雇。いわゆる会社都合の解雇で、通常、リストラ(リストラクチャリング)とよばれる解雇がこれに相当する。退職金を積み増し自発的に退職を促す早期退職制度とは異なるもので、人員削減の最終的な手段といえる。整理解雇を明記した法律はないが、判例によって確立した法律用語である。

 解雇について、労働契約法第16条は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めている。このため整理解雇には、(1)赤字決算など経営を維持するため人員削減の客観的な必要性がある、(2)解雇回避の努力を履行している、(3)解雇対象者の人選の基準が合理的である、(4)労働者と雇用主との間で十分に協議・説明するなど手続きが妥当である、の4要件(整理解雇4要件)を満たす必要がある、と判例上確立している。これを満たさないと裁判官が判断した場合、不当解雇となる。労働基準法第89条は常時10人以上を雇用する企業は就業規則に「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」を記載しなければならないと定めており、企業は就業規則に整理解雇に関する事項を明記しなければならない。整理解雇する場合、30日前に予告する必要があり、猶予期間が30日より短い場合、解雇予告手当を払う必要がある(労働基準法第20条)。整理解雇に従業員が納得できなければ、従業員は訴訟を起こして司法判断を求めることになる。なお解雇には整理解雇のほか、従業員がきわめて悪質な規律違反や非行を行った際の懲戒解雇と、従業員の病気・けがや能力不足などによる普通解雇がある。懲戒解雇や普通解雇が従業員側に原因があるのに対し、整理解雇は会社側の事情に基づく解雇である。

[矢野 武 2020年1月21日]

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人材マネジメント用語集 「整理解雇」の解説

整理解雇

・企業経営の合理化などにより発生する余剰人員を削減する目的で実施される解雇。
・整理解雇が有効なものであるかの判断要素は、①経営上の必要性(経営環境の悪化等)、②解雇回避努力の実施(十分な回避努力がなされたか)、③被雇用者選定の合理性、④手続きの妥当性、の4つによって判断される。

出典 (株)アクティブアンドカンパニー人材マネジメント用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内の整理解雇の言及

【解雇】より


[解雇の態様]
 使用者の行う解雇は,その原因ないし理由が使用者側にあるか,それとも労働者側にあるかによって,実際上,これをいくつかのタイプに分けることができる。たとえば,前者については経営難の打開,余剰人員の削減など,もっぱら企業財政上の理由から行われる〈整理解雇〉がある。この解雇は経済的観点から労働力の量的調整を図るという意味において集団的解雇とも呼ばれる。…

※「整理解雇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」