改訂新版 世界大百科事典 「雇傭契約」の意味・わかりやすい解説
雇傭契約 (こようけいやく)
労働者が使用者に対して労務に服することを約し,使用者が労働者にその報酬を支払うことを約する契約(民法623条)。民法の定める典型契約の一つで,請負,委任とともに他人の労務を利用する契約であるが,使用者の指揮命令のもとで労働者が労務を提供する点に特徴がある。民法上の雇傭契約では,労働者と使用者は対等な立場でなされる契約ととらえているが,現実には,労働者が不利な立場にたたされている。そこで,賃金や労働時間など契約の中身に法が介在し,労働者と使用者ができる限り対等に近い立場で契約できるよう配慮されている。このような労働立法による保護をうける契約を〈労働契約〉と称し,雇傭契約と区別している。したがって,民法上の雇傭契約の適用をうけるのは,同居の親族だけを使用する事業および家事使用人であるにすぎない。
執筆者:香川 孝三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報