溶体化処理(読み)ようたいかしょり(英語表記)solution treatment

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「溶体化処理」の意味・わかりやすい解説

溶体化処理
ようたいかしょり
solution treatment

化合物となっている合金元素原子状態で溶け込ませるための熱処理。銅はアルミニウム中に常温では 0.3%程度しか固溶しないが,584℃では 5.7%固溶する。そこでたとえばその中間の 4.5%銅を含む合金高温に保てば全部が固溶体化するわけで,これが溶体化処理である。この高温固溶体合金を焼入れすると低温で過飽和になるので,適当に焼戻しなどの熱処理をすれば析出を起し (→合金の析出 ) ,あるいはG-P帯が形成されて,硬化現象を示す。高力アルミニウム合金はこの原理を応用したもので,実用合金では成分が多く析出過程も複雑であるが,より安定かつ強力に硬化が進行するように組成が選ばれる。析出硬化を示す多くの合金鋼その他の合金の,焼入れ前の高温処理は溶体化処理を目的としている。

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化学辞典 第2版 「溶体化処理」の解説

溶体化処理
ヨウタイカショリ
solution treatment

固溶体化熱処理,溶体化焼入れともいう.合金を均一固溶体の範囲温度まで加熱して十分な時間保持し,急冷して固溶体の状態を常温までもってくる処理.したがって,常温では溶質元素の多い過飽和固溶体となっている.その後これを常温以上の適当な温度に加熱する時効処理を行って時効硬化させるのが普通である.鋼の場合には,均一オーステナイトにしたのち急冷する.Al合金などの場合には固相線と溶解度線の間の温度で加熱し,急冷する.

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改訂新版 世界大百科事典 「溶体化処理」の意味・わかりやすい解説

溶体化処理 (ようたいかしょり)

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世界大百科事典(旧版)内の溶体化処理の言及

【析出硬化】より

…この固溶体を0℃まで急速に冷却(焼入れ)すると,固溶体から析出相を生じる暇がなく,溶質原子Cuが過飽和に固溶された過飽和固溶体の状態となる。この操作を溶体化処理という。この状態はエネルギー的に不安定であるため,固溶体は分解してより安定な状態に移ろうとする。…

【焼入れ】より

…チタン合金の焼入れでもマルテンサイト変態が生じるが,硬化はほとんど起こらない。アルミニウム合金では高温状態の凍結によって過飽和な固溶体が形成され(このような焼入れは溶体化処理と呼ばれる),軟化が生じる。これらの場合には,焼入れ後に焼戻しを行って所望の性質をつくる。…

※「溶体化処理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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