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焼戻し やきもどしtempering

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

焼戻し
やきもどし
tempering

焼入れされた金属材料を比較的低温に再加熱する作業。効果は3通りに分けられる。 (1) 靭性の付与 鋼を焼入れて生じたマルテンサイトは硬いがややもろいので低温加熱でこれを分解し,トルースタイトソルバイトとして靭性を与える。炭素鋼では通常 120~250℃で行うが,特に粘靭性を要求されるときは 400~600℃で,マルテンサイト中の格子欠陥を十分回復 (消滅) させる。焼戻し脆性の温度帯と重なることがあるので注意がいる。 (2) 二次硬化高速度鋼耐熱合金などの高合金鋼で,炭化物などの析出により硬化させる。温度は通常 500~800℃と高い。 (3) 時効硬化 過飽和固溶体G-P帯,析出物により硬化させる。軽合金に最も著しいが,ベリリウム銅マルエージ鋼にもみられる。

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デジタル大辞泉の解説

やき‐もどし【焼(き)戻し】

[名](スル)焼き入れをした金属を、焼き入れ温度より低い温度で再加熱する操作。鋼を粘り強くするために行うが、高速度鋼などでは硬度が増す。

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百科事典マイペディアの解説

焼戻し【やきもどし】

焼入れによって得られた非平衡な状態を再加熱することによって,必要な性質を得られる平衡状態に戻す熱処理。元来は焼入れした鋼の場合の言い方。焼入れした鋼は,硬さは増すがもろくなる。
→関連項目クロム鋼クロム・モリブデン鋼高張力鋼

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世界大百科事典 第2版の解説

やきもどし【焼戻し tempering】

熱処理の一種。もともとは焼入れしたままでは硬すぎてもろい鋼を再び加熱して適当な硬さに戻すことをいったが,現在では一般に,焼入れによって得た非平衡な状態を再加熱によって,必要な性質が得られるように平衡な状態に向かって戻す操作を総称していう。鋼の焼戻しは150~200℃(αマルテンサイトのβマルテンサイトへの変化),または400~650℃(ソルバイト,トルースタイトの生成)で行われ,このときマルテンサイトおよび残留していたオーステナイトフェライトと炭化物への分解,ならびに他の化合物の析出が起こる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

焼戻し
やきもどし
tempering

高温からの急冷(焼入れ)によってマルテンサイト組織となった鉄鋼材料は、きわめて硬いが、しかしもろいので、150~650℃の温度に再加熱して、靭(じん)性を向上させてから使用に供される。この再加熱する熱処理のことを焼戻しといい、使用目的に応じて最適の焼戻し温度が規定されている。焼戻し温度が高いほど靭性がよくなるから、バネなどに使用する鋼はやや高い温度で焼き戻す。ただし、焼戻しによってむしろ脆化(ぜいか)(焼戻し脆性)がおこることがあるから注意を要する。とくに、リンやアンチモンなどの不純物を含んでいる鋼を約500℃で焼き戻すと、これら不純物原子が結晶粒界に偏析して、粒界に沿った破壊がおこりやすくなる。なお、多量の合金元素を含んだ高速度鋼やマルエージ鋼は、焼戻しによって特殊な化合物や炭化物が微細に析出するために、焼き入れたままの状態よりも焼き戻したほうが硬くなる。この現象を二次硬化という。[西沢泰二]

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