平安中期の私撰(しせん)集。能因撰。寛徳(かんとく)年間(1044~46)以後まもなくの成立。能因の生存時に重なる歌人92名の作者別秀歌撰で、167首からなる。紀貫之(きのつらゆき)の『新撰和歌』や藤原公任(きんとう)の『三十六人撰』などの先行書からの影響が考えられる。入集(にっしゅう)歌数の多い歌人は、藤原長能(ながよし)(10首)、藤原道綱母(みちつなのはは)(7首)、藤原公任、赤染衛門(あかぞめえもん)、和泉(いずみ)式部(6首)などである。総じて能因の和歌鑑賞眼の的確さを示しており、『後拾遺(ごしゅうい)集』の編者藤原通俊(みちとし)は、撰集資料としてこれを敬して遠ざけたが、後の勅撰集『金葉集』『詞花(しか)集』の重要な資料源となった。
[川村晃生]
『川村晃生著『能因法師集・玄々集とその研究』(1979・三弥井書店)』
…《後拾遺和歌集》以後の勅撰集に65首入集。家集のほか,同時代人の歌を集めた《玄々集》や歌書《能因歌枕》を残す。歌道への執心と漂泊の行脚は,西行ら中世詩人の先駆であり,詩文の世界を和歌に移し,現実に即して自己をうたう作歌方法は,《古今和歌集》の伝統をのりこえるもっとも有効な方法として,次代の歌人たちに影響を与えた。…
※「玄々集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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