知覚過敏(読み)ちかくかびん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「知覚過敏」の意味・わかりやすい解説

知覚過敏
ちかくかびん

痛みやかゆみ、寒熱といった刺激に対して過度に敏感になっている状態。歯科の分野では、むし歯がなく歯の内部にある歯髄(神経)に炎症なども伴わないのに、しみるような痛みを歯に感じる状態。冷たい飲食物や甘いもの、酸っぱいものを口にしたときや、歯が冷たい風に触れたときなどに歯に一時的に痛みを感じるものであり、過敏症状が進行すると熱い飲食物や歯ブラシの毛先接触でも痛みを感じるようになる。むし歯の場合は痛みが慢性的に持続するのに対して、知覚過敏では痛みが一過性である点で異なる。通常は、歯の表面のエナメル質の下層にある象牙(ぞうげ)質がなんらかの原因で露出してくることにより、温度差や摩擦などの刺激がそのさらに内部の歯髄(神経)に伝わって痛みを感じるようになる。ときにエナメル質の上から温度差が内部に伝わっただけで痛みを感じることもある。象牙質の露出の原因には、加齢による歯肉の退縮外傷などによる歯の破折、あるいは歯の日常的使用による摩耗溶解などがあげられる。歯ぎしりや、むし歯の治療に起因する神経過敏なども原因となる。

 治療は、露出した象牙質の再石灰化が第一であり、硝酸カリウム成分を含有する歯みがき剤を用いるほか、象牙質内部の空隙(くうげき)をコーティング材の塗布によって物理的に封鎖する、象牙質表面を接着剤で被覆するなどの方法を用いる。

[編集部 2016年7月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の知覚過敏の言及

【知覚異常】より

…振動覚は音叉を骨の突出した部分に当てて検査する。これらの知覚が正常より低下しているものを知覚鈍麻,まったく感じないものを知覚脱失,亢進しているものを知覚過敏という。また触れることで物の形や材質を判断する立体覚や,2点を同時に刺激してそれを2点として識別する能力である二点識別覚などは複合知覚といわれ,大脳皮質頭頂葉の機能が関係している。…

※「知覚過敏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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