摩擦面に生ずる損傷には,焼付き,摩耗,ころがり疲れなどがある。摩耗は,摩擦に伴って固体の表面が少しずつ減っていく現象として特徴づけられ,摩耗粉と呼ばれる細かな粒子を生ずるのがふつうである。摩耗が起こると摩擦面の形状,寸法が変化し,機械部品の性能を低下させ,機械の使用寿命を限定することになる。
摩耗はその機構によって,次の三つに大別される。(1)アブレシブ摩耗 摩擦面の一方が岩や砂などのように硬い物質である場合や,摩擦面間に硬い粒子が入りこんだ場合に生ずる微小な切削作用による摩耗。(2)凝着摩耗 摩擦面の真実接触点に作用する力に基づく微視的な破壊によって生ずる摩耗で,機械の摩擦面でもっとも一般的に見られるものである。(3)腐食摩耗 摩擦面と環境との化学反応が支配的である摩耗。機械の摩擦面では,空気中の酸素や潤滑油中の活性物質との化学反応が主体となる。
体積または重量で表した表面の減量を摩耗量という。摩耗の過程には,微細な接触の機構,接触点まわりの応力・ひずみ分布,微視的な破壊機構など,多くの機構が関与するので,見かけは単純であるが複雑な現象であり,摩擦のように簡単な法則性は見られない。大ざっぱな目安として,摩耗量は摩擦面に垂直に加わる力とすべった距離に比例し,摩擦面材料の硬さに反比例するという,いわゆるホルムの法則があるが,これが成立しない場合も多い。摩耗量の程度を示すのに,体積で表した摩耗量をすべった距離と垂直力で割った比摩耗量という量を用いることがある。金属についてその概略値を示すと,アブレシブ摩耗では10⁻4~10⁻6mm2/kgf,潤滑を行っていない場合の凝着摩耗では10⁻5~10⁻9mm2/kgf,同じく潤滑を行った場合には10⁻7~10⁻9mm2/kgf程度である。
→潤滑 →摩擦
執筆者:木村 好次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
材料とほかの物質との摩擦によって,材料表面が損傷したり,すり減ること.しかし,正確には,固体間のすべりによって生じる場合の摩耗(wear),紙やすりやと石などの研磨粒子や酸化金属粉末,そのほか摩耗粉末,砂などによる摩砕(abrasion),および液体の作用による浸食(erosion)の三つに分類される.浸食は区別しやすいが,前二者はほとんど同じ語として用いられている.摩耗性の評価を紙やすりなど研磨粒子を用いた試験機で測定するのが大部分であり,また,その結果が実際の現象とよく合うために,摩耗をアブレージョンということが多い.ゴムタイヤの摩耗は大部分が摩擦熱による温度上昇によって支配され,プラスチックの摩耗はその温度によって大きく影響される.摩耗試験において,ある荷重の領域では,接触面積Aと荷重Wの関係は,
A ∝ Wn
となり,これは摩擦係数μと関連し,
μ ∝ Wn-1
となる.ゴム,プラスチックではn = 2/3となること,およびそれらの接触は弾性的であることが知られている.繊維の摩耗においては,n = 0.72および0.9という値が得られている.ゴム,プラスチック,合成繊維を含めた高分子材料の摩擦的挙動は,金属に比べて次の3点で異なる.第一は,高分子材料の摩擦係数μは荷重に依存し,荷重の増加でμが減少する.第二は,高分子材料の摩擦は表面粗さに影響され,粗さの増加によって摩擦力が減少する.第三は,見掛けの接触面積に依存する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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