エクウェンシ(英語表記)Ekwensi, Cyprian

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エクウェンシ」の意味・わかりやすい解説

エクウェンシ
Ekwensi, Cyprian

[生]1921.9.26. イギリス保護領ナイジェリア,ミンナ
[没]2007.11.4. ナイジェリア,エヌグ
ナイジェリアのイボ族出身の小説家。フルネーム Cyprian Odiatu Duaka Ekwensi。英語で執筆。イバダン大学卒業後,ロンドンの大学で薬学などを学んだ。ナイジェリア国営放送局の制作部主任を経て,エヌグ地区の情報局長となる。出版業に関係したこともある。作品の幅が広く,子供向けの物語や一般小説から,市場で売られる通俗的な三文小説のたぐいまでを手がけ,都会に生きる人々の生態を活写した。「オニチャ・マーケット文学」と呼ばれる大衆文学サークルの育ての親で,エンターテインメント作家としても人気があり,社会風刺に独特の冴えをみせている。西アフリカの英語小説では早い時期に属する『都市の人々』People of the City(1954)で,政治意識に目ざめた若者群像を描いた。エミールゾラの娼婦物語のナイジェリア版ともいうべき『ジャグア・ナナ』Jagua Nana(1961)は,高級外車ジャガーを乗り回すラゴスの高級娼婦の物語である。牧畜民フラニの生活を人類学的な精密さで描く『燃える草原』Burning Grass(1962),1950年代の政治的覚醒テーマとした『美しい羽根』Beautiful Feathers(1963)など。 ほかに,短編集『ロコタウンほか』Lokotown and Other Stories(1966),1967~70年のビアフラ戦争に取材した小説『平和を生き抜く』Survive the Peace(1976),『ジャグア・ナナの娘』Jagua Nana's Daughter(1986)などがあり,児童文学も多い。(→アフリカ文学

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android