シクロヘキサノン(読み)しくろへきさのん(英語表記)cyclohexanone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シクロヘキサノン」の意味・わかりやすい解説

シクロヘキサノン
しくろへきさのん
cyclohexanone

脂環式ケトンの一つ。フェノールをニッケル系触媒を用いて水素化する方法によっても得られるが、1939年アメリカのデュポン社により開発されたシクロヘキサン酸化による合成法が工業的製法主流となっている。同法では、シクロヘキサンをコバルト系触媒やホウ酸の存在下で空気中の酸素により酸化してシクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物を得ている。ハッカに似た香りをもつ無色液体で、多くの有機溶剤と任意の割合で混じり合い、水にもかなり溶ける。6,6-ナイロンの原料であるアジピン酸や6-ナイロンの原料であるカプロラクタムの合成原料となるので、ナイロン合成繊維の製造の中間体として重要である。このほかに、アセチルセルロース農薬塗料などの溶剤としても使われている。

[廣田 穰]

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化学辞典 第2版 「シクロヘキサノン」の解説

シクロヘキサノン
シクロヘキサノン
cyclohexanone

C6H10O(98.15).アノンともいう.環状脂肪族飽和ケトン類の一つ.工業的には,シクロヘキサンの液相空気酸化およびシクロヘキサノールの脱水素で製造される.ハッカのような臭気をもつ無色の液体.融点-45 ℃,沸点155 ℃.0.9421.1.4507.各種有機溶剤および水に可溶.ナイロン原料であるアジピン酸およびε-カプロラクタムの製造中間体.溶剤として用いられる.[CAS 108-94-1]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シクロヘキサノン」の意味・わかりやすい解説

シクロヘキサノン
cyclohexanone

シクロヘキサンのケトン。化学式 C6H10O 。特異臭をもつ液体。沸点 156℃。シクロヘキサノールの酸化によって得られる。水,アルコールなどに可溶。硝酸などの強い酸化剤によって開環してアジピン酸を生じる。また,シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位によってカプロラクタムが生成する。6-ナイロン,6,6- ナイロンの製造中間体である。

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