ツマグロヨコバイ(読み)つまぐろよこばい

改訂新版 世界大百科事典 「ツマグロヨコバイ」の意味・わかりやすい解説

ツマグロヨコバイ (端黒横這)
green rice leafhopper
Nephotettix cincticeps

半翅目ヨコバイ科の昆虫。吸収性のイネ害虫として,ウンカ類とともにヨコバイ類があげられるが,もっとも重要なのが,このツマグロヨコバイである。体長は4~6mm,全体に鮮緑色で,雄の翅端が顕著な黒色で名もこれによるが,雌では淡褐色である。イネとイネ科などの雑草に寄生し,イネには直接的な吸収害を及ぼすが,さらにイネ萎縮病とイネ黄萎病を媒介伝播(でんぱ)させることがあるので被害が大きい。北海道には分布しない。日本の暖地では年に5世代くらいの発生を繰り返す。幼虫のまま水田近くの雑草間で冬を越す。成虫はイネの葉鞘(ようしよう)内に産卵管を刺し込み,バナナ形の卵を数粒ずつ並べて産む。1雌が100粒くらい産む。卵期が約10日,孵化(ふか)した幼虫は5齢を経て,3週間くらいで成虫となる。水田中のクモ類はこの害虫の重要な天敵である。同属の各種は東南アジア稲作地帯でいずれも重要害虫とされる。
ヨコバイ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツマグロヨコバイ」の意味・わかりやすい解説

ツマグロヨコバイ
つまぐろよこばい / 褄黒横這
[学] Nephotettix cincticeps

昆虫綱半翅(はんし)目同翅亜目ヨコバイ科に属する昆虫。翅端までの体長は4.5~6ミリメートル。体は黄緑色ないし淡緑色で、複眼間には黒色横帯があり、雄の翅端は広く黒色。雄の体腹面は黒色。本州以南、東南アジア各地に分布する。イネ科草本にすみ、とくにイネの害虫として有名。イネの汁を吸うだけでなく、その際、ウイルス性の萎縮(いしゅく)病などをおこすファイトプラズマを媒介する。少なくとも年4回発生し、普通、幼虫態で越冬。沖縄諸島など南方には、近縁種のクロスジツマグロヨコバイN. nigropictusやタイワンツマグロヨコバイN. virescensなどが多く、両種ともイネの萎縮病や黄萎病を媒介する大害虫である。

[林 正美]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツマグロヨコバイ」の意味・わかりやすい解説

ツマグロヨコバイ
Nephotettix cincticeps

半翅目同翅亜目ヨコバイ科ヨコバイ亜科。体長 (翅端まで) 5mm内外で,形はややセミに似る。全体に鮮緑色であるが,頭頂前縁に沿って黒色横帯があり,翅端は雄では黒色,雌では淡褐色である。イネの大害虫として知られ,吸液するほかウイルス病を媒介する。北海道,本州,四国九州南西諸島台湾朝鮮,中国に分布する。九州以南には数種の近縁種がみられる。 (→ヨコバイ )  

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百科事典マイペディア 「ツマグロヨコバイ」の意味・わかりやすい解説

ツマグロヨコバイ

半翅(はんし)目ヨコバイ科の昆虫の一種。体長5mm内外,体は黄緑色。翅端部は雄は黒色,雌は淡褐色。北海道を除く日本,中国,台湾に分布。幼虫・成虫ともにイネ科植物特に水稲の汁を吸い,萎縮(いしゅく)病,黄萎病などを媒介する害虫。年に4〜5回発生し,幼虫で雑草中で越冬。
→関連項目ヨコバイ

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