ファイトプラズマ(読み)ふぁいとぷらずま(その他表記)Phytoplasma

デジタル大辞泉 「ファイトプラズマ」の意味・読み・例文・類語

ファイトプラズマ(Phytoplasma)

植物に寄生し、さまざまな病害原因となるファイトプラズマ属の特殊な細菌総称。かつてマイコプラズマに類似した病原として、マイコプラズマ様微生物とよばれていた。主にヨコバイウンカなどの昆虫によって媒介され、天狗巣病葉化病などを引き起こす。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファイトプラズマ」の意味・わかりやすい解説

ファイトプラズマ
ふぁいとぷらずま
Phytoplasma

クワ萎縮(いしゅく)病、イネ黄萎(おうい)病、キリてんぐ巣病など、萎黄叢生(いおうそうせい)症状を示す植物の病気の病原。これらの病気は従来ウイルスが病原と考えられていたが、1967年(昭和42)土居養二(1927―2006)らによって、世界で初めてマイコプラズマmycoplasmaに類似した微生物が病原であることが発見された。この病原微生物は、人工培養ができないため諸性質が不明で長い間分類学的位置が決定されず、マイコプラズマ様微生物とよばれていたが、マイコプラズマとは異なった性質を有することが明らかにされ、1994年以降、ファイトプラズマとよぶことになった。電子顕微鏡下で観察される形態は多形性で60~1200ナノメートルの大きさで、細胞壁がなく、原形質膜(限界膜ともいう)で包まれていて、中心にDNAデオキシリボ核酸)がある。植物体内では、篩管(しかん)内、篩部柔細胞や伴細胞に局在する。感染した植物は、萎黄、叢生、萎縮、花の葉化など特徴のある全身病徴を示す。ヨコバイ類によって媒介され、わが国では20種以上の病害が報告されている。とくにイネ黄萎病、クワ萎縮病、キリてんぐ巣病など全国的に発生し被害が大きい。なお、この微生物はテトラサイクリン感受性がある。

[梶原敏宏]

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百科事典マイペディア 「ファイトプラズマ」の意味・わかりやすい解説

ファイトプラズマ

マイコプラズマ様微生物(MLO)とも。植物に萎黄叢生症状を引き起こす原核微生物の総称。細菌一種だが,多形性で細胞壁を欠き,培地上での人工培養が困難。ヨコバイなどの昆虫によって媒介され,植物の師部で増殖する。主なファイトプラズマ病は,イネ黄萎病,クワ萎縮病,ミツバてんぐ巣病,レタス黄萎病など。→萎縮病

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