内刳(読み)うちぐり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「内刳」の意味・わかりやすい解説

内刳
うちぐり

彫刻用語。木造彫刻の内部を刳(く)って空洞にすること。木材の中心をとらずに彫刻すると、心部と表面との乾燥度の違いで干割(ひわ)れができ、像をだいなしにしてしまう。内刳は干割れを防ぎ、像の重量を減ずるためになされる。立像は背中から、座像背部や像底から刳るのが普通で、背中から彫り取るのを、とくに背刳(せぐり)という。内刳の鑿跡(のみあと)の精粗や肉の厚さで、ある程度の時代の判定が可能である。内刳による空洞を利用して、ここに納入品を入れたり、内表面に造像銘などを記すこともある。平安時代中期になると、寄木造(よせぎづくり)の発達で肉が薄くなり、内刳面を平滑にし、漆を塗ったり、金銀箔(はく)を貼(は)った像もある。

[佐藤昭夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「内刳」の意味・わかりやすい解説

内刳【うちぐり】

木造彫刻で,乾燥による干割れを防ぐために内部を刳り抜くこと。一木造の場合は像の背部から刳り(背刳(せぐり)),背板を当てることがある。寄木造では内部に大きく内刳が施されるのが普通。
→関連項目割矧

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「内刳」の意味・わかりやすい解説

内刳
うちぐり

木像の内部をえぐり空洞にする技法。乾燥による亀裂防止,重量の軽減のために行われた。古くは法隆寺百済観音』に施され,下って平安時代の木像には盛んに用いられた。木芯を底からくりぬく方法,背面からえぐって (背刳) 別板を当てる方法,像を2つ割りにして内部をえぐり,再びはぎ合せる割りはぎの方法などがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android