奈良・法隆寺の大宝蔵殿に安置される観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)立像の俗称。「百済」という名は、この像が飛び抜けて長身で、異国的な感じを与え、百済伝来と伝えられたことによるらしいが、いつごろからその名があるのかは、よくわからない。クスノキを材とし、また水瓶(すいびょう)と蓮華座(れんげざ)の材がヒノキで、ともに日本産の木材なので、日本でつくられたものと思われる。元来法隆寺の像ではなく、鎌倉時代の法隆寺の記録『古今目録抄』にはこの像についての記載はなく、江戸時代の『古今一陽集』に初めてみえるところから、この間に他の寺から法隆寺へ移されたものと考えられる。飛鳥(あすか)時代末から白鳳(はくほう)時代の初頭(7世紀なかば)にかけてつくられたものと思われ、飛鳥盛期の止利様(とりよう)の像とは違った立体表現とやわらかさを備えている。また8世紀に入って流行する乾漆像の表面仕上げと同様に、上半身の肉づけを補うために、こくそ漆を盛り上げている点が注目される。
[佐藤昭夫]
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…室町時代以降は子院の本堂や表門等が目だつが,西院築垣が版築による築地として古例である(図)。
[彫刻]
飛鳥時代の造立になる仏像は,金堂の釈迦三尊像,四天王像,夢殿の救世(ぐぜ)観音像,宝物館所蔵の百済観音像と,現在東京国立博物館にある小金銅仏群(四十八体仏)がある。釈迦三尊は聖徳太子とその妃のため,推古31年(623)止利仏師(鞍作止利)が造ったとの銘があり,四天王像は山口大口費(やまぐちのおおくちのあたえ)作の銘があって,以後の四天王像と像容をまったく異にする。…
※「百済観音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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