女性管理職登用(読み)じょせいかんりしょくとうよう

知恵蔵 「女性管理職登用」の解説

女性管理職登用

企業各社の経済活動で、管理職などの指導的な地位に女性を多く登用しようという試み。第2次安倍政権による『「日本再興戦略」改訂2014』では、その中核に女性の活用を掲げ、2020年までに、このような地位を占める女性の割合を30%まで引き上げるという目標を掲げている。
企業や社会のありかたなど過去の経緯や、男女性別による固定的な役割分担意識により、これまでの日本の企業における女性の地位や役割は限定的なものだった。このため、営業職に女性がほとんどいない、課長以上の管理職は男性が大半を占めているなどの現状がある。その解決に向けて、厚生労働省は経営者団体と連携し、01年度から「女性の活躍推進協議会」を開催している。その提言として、個々の企業が男女労働者間の差を解消する自主的・積極的に行う取り組みとして「ポジティブ・アクション」が提唱された。これは、単に女性というだけで「優遇」するわけではなく、女性が男性よりも能力を発揮しにくい環境におかれている場合に、その状況を是正するため、一定期限を設けて状況打開のための特別な配慮をするというものである。具体的には、指導的地位に就く女性の人数比率など枠を設定、その数値目標達成までの期間を定め、研修の機会の充実や仕事と生活の調和など、女性参画の拡大を図るための基盤整備を推進するなどの手法が提示された。また、経済産業省も女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として東京証券取引所と共同で選定し、企業のイノベーション促進、グローバルでの競争力強化に貢献するものとして、企業の取り組みを促している。
13年に帝国データバンクが行った「女性登用に対する企業の意識調査」によれば、有効回答のあった約1万社のうち、約4割がポジティブ・アクションとして女性の採用や登用を進めている。ただし、管理職の割合0%(全員が男性)の企業が半数近くもあり、割合10%未満の企業は合わせて8割を超えた。内閣府の調べた上場企業など約3500社中約1200社(14年7月現在)でも、各企業の取り組みはまだ始まったばかりという状況にある。企業の意見としては、性別に関係なく優秀な人材を登用したいとするものの、結婚退職などで社員教育のための投資が無駄となる懸念や、育児休暇をとる人を登用するのは零細企業では難しいなどの声もある。これらは企業が独自に「努力」するというよりも、社会的な環境の充実が不可欠である。それでも、1986年に施行された男女雇用機会均等法が浸透し、ワークライフバランスなど、男女平等参画の社会背景は徐々に整備されてきている。女性管理職の積極的な登用が進むことで、企業の多様性が広がり、企業風土にも良い影響を与えるものと期待されている。

(金谷俊秀  ライター / 2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報