追落(読み)おいおとす

精選版 日本国語大辞典 「追落」の意味・読み・例文・類語

おい‐おと・す おひ‥【追落】

〘他サ五(四)〙
① 追って、相手を落とす。
平家(13C前)七「平家の大勢をくりからが谷へ追(オヒ)おとさうど思ふなり」
② 敵を追い払う。敵兵を追い払ってその城を奪い取る。転じて、人をある地位などから引きずりおろす。
※平家(13C前)二「入道身を捨てて凶徒を追落(オヒオト)し」
太平記(14C後)七「三方より攻上って城を追落し、宮を生捕り奉るべし」
③ 追いかけて奪い取る。路上で強奪する。
源平盛衰記(14C前)四二「年貢正税追落(おヒヲトシ)、〈略〉殺賊強盗して妻子を養ふとこそ聞く」

おい‐おとし おひ‥【追落】

〘名〙
① 追い落とすこと。敵兵を追い払って城を攻め取ること。転じて、人をその地位などから引きずりおろすこと。
※水中花(1979)〈五木寛之〉三「堀越副社長追い落し作戦片棒かついだわけよ」
往来の人を脅したり追いかけたりして、落とさせた財布などを奪い取ること。また、その者。鎌倉時代からの語だが、江戸時代には、刑法上追剥(おいはぎ)と区別され、死罪に処せられた。
沙汰未練書(14C初)「路次狼藉とは〈略〉追落、女捕刈田、苅畠以下事也」
囲碁で、欠け目の続いた石が、あたりで追われて、すべてをつぐことができず取られてしまうこと。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の追落の言及

【検断沙汰】より

…鎌倉幕府は当初,当事者の身分によって管轄を分かち,1249年(建長1)には御家人訴訟専掌機関としての引付方を発足させたが,まもなく訴訟対象によって管轄を分かつ制度に改め,不動産訴訟を対象とする所務沙汰,動産および債権債務関係を扱う雑務沙汰と,検断沙汰の3系列に訴訟制度を編成した。幕府の訴訟制度を解説した《沙汰未練書》によると,検断沙汰の対象は,謀叛,夜討,強盗,窃盗,山賊,海賊,殺害,刃傷,放火,打擲,蹂躙,大袋,昼強盗,路次狼藉,追落,女捕,刈田,刈畠であり(大袋・追落は強盗の一種,刈田・刈畠は他人の田畠の作物を強奪する行為),おおむね現在の刑事事件に相当する。 検断沙汰を扱う機関は関東では侍所で,訴人が訴状を侍所へ提出すると,侍所頭人が銘を加えて(訴状の端裏に年月日と訴人名を記す)担当奉行に送る。…

【盗み】より

…同書は強盗,窃盗を区別せず,共に〈盗〉と称し,行為の態様によっていくつかの類型を設けていた。強盗に相当するものとしては〈追剝(おいはぎ)〉〈追落(おいおとし)〉〈押込〉などがあり,刑は,獄門,死罪等の差はあるものの,いずれも死刑であった。窃盗にあたるものも行為の態様により数種に分けられ,刑の重いものから列挙すれば,〈忍入りの盗〉〈戸明きの盗〉〈手元の盗〉〈軽き盗〉〈湯屋の盗〉の順となり,刑はまた,盗んだものの金額によっても左右された。…

※「追落」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android