死罪(読み)シザイ

デジタル大辞泉 「死罪」の意味・読み・例文・類語

し‐ざい【死罪】

最も重い刑罰として、罪を犯した者の生命を絶つこと。
手紙や上表文の末尾に添える語。非礼の罪をわびる気持ちを表す。「死罪死罪」「頓首死罪」などの形で用いる。
江戸時代の刑罰の一。斬首ざんしゅの刑に処して、死体は試しりの用に供され、財産も没収された。

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精選版 日本国語大辞典 「死罪」の意味・読み・例文・類語

し‐ざい【死罪】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 最も重い刑罰としての生命刑の総称。また、死に相当する犯罪。罪人の生命を絶つ刑罰。死刑に処せられるべき犯罪。奈良時代の律では、絞・斬の二種があった。→死刑
    1. [初出の実例]「百姓飢荒、或陥罪網、冝赦天下、与民更新。死罪已下、罪無軽重、咸赦除之」(出典:続日本紀‐慶雲二年(705)八月戊午)
    2. 「保元までは君廿五代の間おこなはれざりし死罪をはじめてとりおこなひ」(出典:平家物語(13C前)二)
    3. [その他の文献]〔墨子‐非攻上〕
  3. 江戸時代、御定書(おさだめがき)に規定された生命刑六種の一つ。斬首刑で、その死骸を試斬(ためしぎり)にされるもの。闕所(けっしょ)の刑が付加された。生命刑として、他に、鋸挽(のこぎりびき)、磔、獄門、火罪、下手人(げしゅにん)があるが、下手人より重く、火罪よりは軽い。→死刑
    1. [初出の実例]「今此事を頼みし人、もしも洩れ聞き候はば、しざいに逢はんは必定なり」(出典:仮名草子・竹斎(1621‐23)上)
  4. 手紙や上表文などの冒頭や終わりに書く語。死に相当するの意で、失礼をわびる気持を表わし、「死罪死罪」の形で用いる。
    1. [初出の実例]「昨日述短懐今朝汙耳目、更承賜書且奉不次死罪死罪」(出典:万葉集(8C後)一七・三九七三・題詞)
    2. [その他の文献]〔曹植‐上責躬応詔詩表〕
  5. ( から ) 謝罪の気持を表わす御免をきどっていう語。
    1. [初出の実例]「御免御免を、死罪死罪」(出典:大坂繁花風土記(1814)学者ぶって誠は粋がる詞)

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改訂新版 世界大百科事典 「死罪」の意味・わかりやすい解説

死罪 (しざい)

最も重い刑罰である生命刑の総称。また,死に相当する罪をいう。日本古代における死刑は,すでに《隋書》倭国伝中に殺人,強盗,姦の罪に対して科されたことが見えるが,律令制度の死罪は大辟(だいびやく)/(たいへき)罪ともいい絞,斬の2種があり,斬は絞より1等重いとする。絞は受刑者を棒に縛し,2本の綱で首を挟み,その綱の左右を2人の執行人が絞り上げて窒息死させる。斬は刀で首を切り落とすものである。死刑の執行には天皇の勅裁を必要とし,かつその奏上は原則として3度行う。死刑の執行は市(いち)において公開されるが,皇親や五位以上の者は家で刑部省官人の立会いのもとで自尽することを許し,七位以上の者および婦人の絞は公開しない。市での執行は,弾正台および衛府の官人が立ち会い,もし囚に無実の疑いがあれば直ちに執行の停止を命じ,奏聞する。死刑は原則として秋分以後,立春以前に行い,立春から秋分までの間,および大祀・斎日等には,その執行を停止する。日本では,平安時代の弘仁年間(810-824)から1156年(保元1)まで約340年間,死刑の執行が停止された。
執筆者: 江戸時代には幕府の《公事方御定書》によれば打ち首の上,田畑,家屋敷,家財を闕所(けつしよ)(没収)するもので,死屍は様斬(ためしぎり)の用に供された。処刑前に引廻しが行われる場合もある。獄門より軽く,斬罪下手人よりは重い。斬罪,下手人は同じく斬首刑であるが闕所,様斬,引廻しをともなわなかった。また下手人はその適用が庶民間の普通殺人犯に限られたのに対し,死罪は士庶に科され,適用罪種も広範囲にわたった。10両以上の盗犯が死罪であったことはよく知られる。
死刑
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「死罪」の意味・わかりやすい解説

死罪
しざい

江戸幕府法上の主として庶民に科せられた死刑の一種。下手人(げしゅにん)と同様、江戸では小伝馬町牢屋(ろうや)の中の切場(俗に土壇場(どたんば)という)で斬首(ざんしゅ)する刑をいう。下手人は殺人だけに科せられるが、死罪は殺人以外の犯罪にも科せられる。殺人については、下手人が利欲にかかわらない喧嘩(けんか)口論などによる殺人に科せられたのに対し、死罪は利欲にかかわる殺人に科せられた。したがって、死罪のほうが下手人より重いとされ、下手人と異なり、死屍(しし)が様斬(ためしぎり)にされ、犯人の家屋敷・家財も没収され、情状の重い者には引廻(ひきまわ)しが付加されることがあった。

石井良助

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「死罪」の意味・わかりやすい解説

死罪
しざい

(1) 古代,律に規定された死刑に相当する罪または死刑そのもののこと。五刑 (笞,杖,徒,流,死) の一つ。斬,絞の2種があり,斬にあたる罪としては謀反,悪逆,外祖父母,夫,夫の父母謀殺,本主,本国守殺など,絞にあたる罪としては謀大逆,謀反,妻殺などである。 (2) 江戸時代,庶人に科せられた刑罰の一つ。『公事方御定書』には,首を刎ね,死骸を取捨て,様斬 (ためしぎり) にするとある。つまり,打首 (斬首) のことで,これに処せられると,田畑,家屋敷,家財は闕所となったが,引廻は付加されるときとされないときがあった。死罪は 10両以上の窃盗,辻斬,密通などに対して科せられ,処刑は牢屋敷内の切場 (きりば。俗に土壇場ともいう) で行われた。ただし,島抜けについてはその島で行なった。

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普及版 字通 「死罪」の読み・字形・画数・意味

【死罪】しざい

死刑。また、奏章・手紙の末語に用いる。〔史記、馮唐伝〕此れに由りて之れを言へば、陛下頗・李牧を得と雖も、用ふること能はざらん。臣に愚、忌(きき)に觸れん。死罪死罪。

字通「死」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「死罪」の意味・わかりやすい解説

死罪【しざい】

最も重い刑罰である生命刑の総称。《隋書》倭国伝にすでに強盗・姦(かん)の罪に科せられていたことがみえる。律令制下では大辟罪(たいへきざい)ともいい,絞(こう),斬(ざん)の二種(斬が重い)があった。なお日本では弘仁年間(810年―824年)から1156年まで執行が停止されている。江戸時代にも刑罰の一つで,牢(ろう)内の土壇場で目隠しの上斬首された。10両以上の窃盗などに科され,罪の重い場合は引回しが付加され,死体はためしぎりに供された。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「死罪」の解説

死罪
しざい

江戸時代に行われた斬首による死刑の一種で,庶民に対して執行された。これに対して士身分に対する死刑は斬罪であった。主として主人の親類,地主,目上の親族などに対する傷害の罪に対して科せられた。斬首にあたり目隠しがなされ,死体は刀剣の様斬(ためしぎり)の用に供された。

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世界大百科事典(旧版)内の死罪の言及

【様斬】より

…様者(ためしもの)ともいう。将軍の佩刀(はいとう)の場合,死罪の刑に処せられた者の死体を用い,牢屋内の様場(ためしば)において執り行った。浪人山田朝右衛門が代々御様御用(おためしごよう)の任にあたり,腰物奉行(こしものぶぎよう)らの立会いの下で,土壇に横たえられた刑屍を据物斬(すえものぎり)して斬れ味などを報告する。…

※「死罪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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