日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイスマン」の意味・わかりやすい解説
アイスマン
あいすまん
Iceman
氷河中より発見された紀元前3300~3100年ごろの石器時代人のミイラの通称。1991年9月、オーストリアのチロール州とイタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ自治州の間にあるアルプス山中、エッツタール渓谷の溶けかけた氷河(標高3200メートル付近)から身体状態が良好に保たれたまま発見された。ドイツ語では発見地から「エッツィÖtzi」とよばれる。
死後5100~5300年余りを経過した新石器時代末期の男性で、年齢は25歳~40歳代、身長160センチメートル、体重40キログラムと推定され、背中や手足に入れ墨があった。顔面の状態や左肩からみつかった矢尻(やじり)(矢の先)により、背後から矢で射られ、顔を殴られるなどして出血多量で死んだらしいことがわかっている。また、ザールラントSaarland大学(ドイツ)を中心にした国際研究チームが細胞核DNAの全遺伝情報(ゲノム)を解読した結果を2012年2月に発表した。これによると、血液型はO型で瞳(ひとみ)は茶色、牛乳などに含まれる乳糖の消化酵素がつくれない体質のために胃腸が弱い可能性があることがわかった。イタリアのボルツァーノ県立考古学博物館の冷凍庫に保管され、研究が続けられている。
[編集部]