日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉛・亜鉛鉱床」の意味・わかりやすい解説
鉛・亜鉛鉱床
なまりあえんこうしょう
鉛鉱石と亜鉛鉱石を産する鉱床。鉛と亜鉛の主要鉱石鉱物である方鉛鉱および閃亜鉛鉱は一般に密接に伴って産するので、鉛鉱床lead depositと亜鉛鉱床zinc depositはこのように一括して扱われる。鉛・亜鉛鉱床の主要な鉱床型は熱水鉱床で、さらにスカルン型鉱床、熱水交代鉱床、火山性塊状硫化物鉱床、噴出堆積(たいせき)型鉱床(セデックスSedex型鉱床)、ミシシッピバレー型鉱床に分けられる。
スカルン型鉛・亜鉛鉱床はしばしば銀を伴い、主として中国、韓国、日本など東アジアに分布する。熱水交代鉛・亜鉛鉱床は石灰岩を交代する塊状鉱床として産し、銅、銀、金を伴うことが多い。アメリカ西南部からメキシコ、ペルーにかけて分布する。火山性塊状硫化物鉛・亜鉛鉱床は、酸性の海底火山活動に伴って生成されたものである。銅を伴うことが多く、カナダ、カザフスタン、スウェーデンなどに産する。セデックス型鉛・亜鉛鉱床は、砂岩、頁(けつ)岩などの堆積岩中に産する大型の層状鉱床で、大陸の分裂に伴って形成された堆積海盆におこったマントル熱対流上昇部を熱源とした熱水活動により、海底に生成された鉱床と考えられる。カナダ、オーストラリア、アメリカ、南アフリカ、インドなどに分布する。ミシシッピバレー型鉛・亜鉛鉱床は炭酸塩岩(主としてドロマイト)中の一定層準に、多数の塊状ないし層状の鉱床が広く分布し鉱床帯をつくるもので、続成(ぞくせい)作用に伴う低温熱水作用の産物と考えられる。鉛・亜鉛以外の鉱石を伴わないのが特徴である。北アメリカがこの型の鉱床の主要分布地であるが、その他モロッコ、ポーランド、オーストリア、スロベニア、イタリア、オーストラリアなどにも産する。
2002年の世界の鉱山における鉛の生産量(金属量)は290万トンで、主要生産国はオーストラリア71万5000トン、中国65万トン、アメリカ45万トン、ペルー29万5000トン、メキシコ14万トン、カナダ10万トン、モロッコ8万トンとなっている。また、鉛埋蔵量(金属量)は全世界6800万トン、オーストラリア1500万トン、中国1100万トン、アメリカ810万トン、カザフスタン500万トン、ペルー350万トン、メキシコ150万トン。亜鉛の生産量(金属量)は890万トンで、主要生産国はオーストラリア152万トン、中国150万トン、ペルー45万トン、カナダ29万5000トン、アメリカ14万トン、メキシコ10万トン。亜鉛埋蔵量(金属量)は全世界2億トン、オーストラリア3300万トン、中国3300万トン、アメリカ3000万トン、ペルー1600万トン、カナダ1100万トン、メキシコ800万トンである。
[鞠子 正]